訪販協とジャパンライフ事件 給付まで5年、問われる「救済基金」

21件の給付実施、積立金〝再徴収〟は回避か
申請代行の弁護団「亡くなられた方も」、制度見直し必至


  2017年末に破たんした「ジャパンライフ」の被害者から「訪問販売消費者救済基金(以下救済基金、チャート図参照)」 の利用申請を受けていた日本訪問販売協会(事務局・東京都新宿区)が2月2日、申請者に給付を行ったことを明らかにした。 18年初頭の初申請からすでに5年を経過。ようやく給付に至ったものの、一連の事態をめぐる紆余曲折の全容は、今も業界の関心事の一つとなっている。 今後は、申請案件の仕分け作業や審査が長期化した要因の分析、制度の見直しが急務と言える。

審査委員会が12月27日報告

  「救済基金」は、協会の正会員と訪問販売で契約を結んだ消費者が正当な理由なく返金を受けられない場合、 1契約あたり100万円を上限に協会が返金を肩代わり(給付)する仕組み。正会員が退会済みでも、退会前に訪販で締結した契約なら給付の対象となるため、 17年末のジャパンライフ破たん後、同社が協会を退会する15年10月までに契約を結んでいた被害者から利用申請が相次いだ。 20年1月をもってジャ社被害者からの受付を締め切ると協会が告知したことを受けて、19年末~20年初頭にも申請が殺到した。
 その後、申請された契約の仕分けを協会事務局で進め、昨年2月、正式に受理した案件を第三者機関である「消費者救済に係る審査委員会」(以下審査委員会) に付託。11月までに計8回の会合をもち、消費者問題に詳しい有識者5人が給付の可否や給付額を審査していた。
 審査委員会は12月27日、審査の結果を協会の竹永美紀会長へ報告。年明けの1月11日の理事会で、給付を妥当とされた案件で給付を行うことを決議した (2月2日号4面既報)

▲協会のWEBサイトで、
「訪問販売消費者救済基金」の
   利用を申請したジャパンライフ被害者のうち、
   21件の契約について給付を行った旨を告知

弁護団「不受理のほうが圧倒的に多い」

 協会は2月2日、理事会による決議を受けて、契約件数ベースで「21件」の給付を実施したと発表。「救済基金」の実施状況の公表は、 事務細則で年度末事業報告において行うと定められているが、2000億円超もの被害を生んだジャ社事件の重大性などを踏まえ、 速やかな公表を理事会で決議していた。 ただし、協会に寄せられた「救済基金」の申請総件数や審査委員会に付託した件数、 審査委員会で給付を妥当とされた件数などについては、公表の対象外。本紙の取材にも「答えられない」(事務局)とコメントした。
 協会は当初、申請数の開示に消極的ではなく、19年6月時点で契約件数ベースで199件の申請数を報告。だが、受付締切告知後の申請殺到などを経て、 非開示の方向に転換した。関係筋の話を総合すると最終的な申請数は数千件に達したとみられ、仕分け作業の長期化と審査委員会への付託が遅れる一因となった。
 また、申請された契約の少なくない件数は、受理の可否の判断に必要な添付物の欠如・不足などを理由として、受理されなかった可能性が指摘される。
 18年にジャ社被害者11人の「救済基金」利用申請を代行し、契約件数ベースで数十件を申請した「ジャパンライフ被害対策大阪弁護団」 (以下弁護団、団長=薬袋真司弁護士)は、本紙の取材に、申請した契約は「証拠が足りないといった理由で、不受理となった契約のほうが圧倒的に多い」 と説明した。 協会の正会員の関心事と言える、給付された金額の公表も見送られている。


(続きは2023年2月9日号参照)