社説 〝時代の節目〟の人事

 「女性の活躍推進」は、近年さまざまな分野で叫ばれてきた。化粧品分野では女性が活躍する機会が多く、中には社員の大半が女性を占める企業もある。その意味では、ダイレクトセリング化粧品市場は、他業種業態に先駆けて女性が活躍してきた分野と言えるが、過去数年でそれを最も象徴していたのが、2020年1月にポーラ代表取締役社長に就任した及川美紀氏の人事であることは確かだろう。及川氏は昨年末で社長を退任し、その任期を終えた。1月8日に開催された日本訪問販売協会の賀詞交歓会にも及川氏の姿はなかったが、会場からは「鳴り物入りでポーラさんの社長に就任して注目されたが、何と言っても時期が悪かった」と、退任を残念がる声も聞かれた。
 前述したように、女性の活躍推進が求められる中、リーディングカンパニーであるポーラで〝初の女性トップ〟というポストは、業界の内外で話題を呼んだ。及川氏は〝現場上がりの叩き上げ〟ということもあり、ダイレクトセリングというビジネスモデルが大きくその姿を変えてきた20世紀後半からこれまで、営業現場で販売員たちの活動を見てきた。同じ女性、しかも現場をよく知る人物ということで、販売員からの評判も良かったようだ。就任当時は、同業他社の女性スタッフや幹部からも、及川氏の活躍に期待する声もよく聞かれた。しかしながら、及川氏の就任期間中は周囲の期待と裏腹に、ポーラの業績は下降線をたどり続けた。折しもコロナ禍が始まった年に社長に就任し、収束するまでの間、苦境に立たされ続けた及川氏。「B.A」や「アペックス」といった看板ブランドの強化・刷新を図ったほか、営業施策ではオンライン・オフライン両軸によるサロン戦略の立て直し、化粧品専門店等の新規チャネル開拓など業績回復を試みたが、大きな成果を上げることはできなかった。結果として、及川氏は社長を退任、代わって小林琢磨氏が新社長に就任することとなった。
 小林新社長の下でスタートしたポーラは、DX化をさらに推進して既存チャネルではアプローチできなかった若年層などへの攻勢を強めるとみられる。小林氏はオルビスなどグループ傘下のブランドで実績を作ってきた人物。47歳と若く、小林氏が2002年にポーラに入社した当時は、まさに鈴木郷史氏(現・ポーラ・オルビスホールディングス会長)が〝脱・訪販〟を掲げて大鉈を振るい始めた時期であり、いわゆる〝昔ながらの訪販〟とは異なる文化の中で育まれてきた。訪販協賀詞交歓会に出席したある人物は、この人事について、「古い時代から新しい時代への1つの節目」と評した。〝新しい時代〟に属し、及川氏とは異なるカラーの小林新社長。ポーラの営業現場はさまざまな課題に直面しており、新トップの方針をどう受け入れていくのか、注目される。