社説 DS業界でも「人手不足」切実

 労働人口の減少などを背景にダイレクトセリング業界でも人手不足が起きている。前号1面の本紙アンケートでは、62%が従業員の不足を回答。特にDSの要である営業関連部門の不足をあげるところが多く、切実な問題となっている。業務の効率化、省力化である程度は補えるとしても、最終的にはマンパワーが問われる。市場規模の縮傾向に拍車をかけることが懸念される。
 DS市場規模は、3兆3400億円に達した96年をピークに下降線をたどってきた。縮小は、現場を支える販売員とディストリビューターの高齢化や離脱が主要因の一つ。その点で人手不足の問題はずっと以前から顕在化していた。この影響が、そこまで懸念されていなかった会社従業員の確保にまで及び始めている。
 人手不足を生じている部門・職種は、本紙の用意した項目から複数回答方式で聞いた結果、もっとも多かった項目が「営業・販売現場支援・接客」で、71%が選択した。改めて指摘するまでもなく、営業関連部門はDSの業績に直結する最重要セクション。人員・人材の確保に難を抱えれば会社の先行きを左右することにもなり、深刻な問題として浮上している。
 人手不足の理由のトップ2は 「退職・離職」と「求めるスキル・能力の不一致」。会社側は、退職にともなう人員の減少を補填したい一方、求める人材の獲得が思うように進まない状況が窺える。次に多かったのは「業務量の拡大・業容の拡大」で、業績を伸ばす好機であるにもかかわらず、足踏みを余儀なくされている状況も窺えた。
 求人の雇用形態は「正社員」が最多。86%が募集要項に含めており、契約・派遣社員等の有期雇用を条件とする求人を大きく上回った。ただ、人手不足の理由として「求人に応募がない」とする回答が一定数を集めた結果からは、より良い条件が求められていることが分かる。
 このような状況も背景に、人手不足の解消を目的とする就労条件等の制度・仕組みの見直しを訊くと、38%が「給与・報酬制度の見直し(給与額の引き上げなど)」に着手したと回答。待遇を上げたケースが少なくない。また、33%は「定年後の再雇用、嘱託勤務、復職制度」を取っていると回答。有能な人材をつなぎとめる方策も積極的に活用されている。
 民間調査会社の調べによれば、人手不足を理由に倒産した会社は2024年に342件で、13年の調査開始以降で過去最多だったという。倒産が多かったという業種業態は建設業、物流業、飲食店など。いずれもマーケットの需要は高く、DS業界に比較した景況感は優良なはずだが、それでも人を集められていない。人手不足が国内経済の成長可能性と持続性に影を落としている。