社説 正念場の訪販化粧品
本紙が2024年12月に実施した「第77回ダイレクトセリング実施企業売上高ランキング調査」では、前期と可能な121社の売上高総額は1兆3667億6800万円で、前期比2・9%増となり、前回調査(=2024年7月実施)に続いてプラスとなった。しかしながら、歴史的な物価高騰や物流コストの増大、販売員の高齢化など、楽観視できない状況にある。
ダイレクトセリング化粧品市場では、コロナ禍を経てオンライン・オフライン両軸のビジネスモデルを構築する動きが強まり、定着しつつある。同時に、サロンや実店舗、さらには商業施設・各種イベントへの出展といったリアル施策に回帰するケースも散見される。老舗の中には、この流れに乗じて、これまで実施してこなかった新たな取り組み(例・期間限定のポップアップストア出店)にチャレンジする企業もみられるなど、2024年はさまざまな変化がみられた年でもあった。
半面、既存のビジネスモデルでは消費者ニーズをとらえづらくなってきた危機感もみられる。最大手のポーラの直近業績では、ポーラブランドの主力である委託販売チャネルの苦戦が顕著だ。同社はオンライン・オフラインを統合したビジネスモデルを構築し、ECや化粧品専門店など、ブランドへの入り口を多種揃えた上で、最終的にサロンへ誘導してロイヤルユーザーを獲得するべく事業改革を進めているが、大きな成果はみられていない。これに対し、同社は1月1日付で旧オルビス代表取締役社長の小林琢磨氏がポーラの代表取締役社長に就任した。小林新社長はこれまで、ディセンシア、オルビスとグループの各ブランドを手がけ、特にオルビスではDX戦略を推進して実績を残した。ポーラにおいても、「DX戦略の強化によるポーラブランドのテコ入れ、マーケットの拡大」という構想が読み取ることができる。これは、ポーラがコロナ禍当時から進めてきた戦略を順当に継承する流れであり、2000年代前半からの「脱・訪販」という方向性を現代のニーズに合わせた形で実現しようというものだろう。
世の中のトレンドという点で言えば、ポーラの戦略は正統派であるが、これは、団塊世代を中心としたベテラン販売員の〝切り捨て〟や〝取り残し〟にもつながり、経営側と現場の意識の乖離を招きかねない。多くの老舗企業でポーラと同様の問題を抱えながら抜本的な改革を行えていない最大の理由は、まさにその点に尽きる。別の視点では、創業から数十年を経た老舗企業では、トップの世代交代も増えてきた。新しい風が期待される一方で、先代トップが創業者の場合は、販売組織に対する求心力の低下が懸念される。コロナ禍が落ち着き、サロンビジネス改革の方向性もある程度見えてきた2025年は、訪販化粧品企業にとって正念場の年となりそうだ。
ダイレクトセリング化粧品市場では、コロナ禍を経てオンライン・オフライン両軸のビジネスモデルを構築する動きが強まり、定着しつつある。同時に、サロンや実店舗、さらには商業施設・各種イベントへの出展といったリアル施策に回帰するケースも散見される。老舗の中には、この流れに乗じて、これまで実施してこなかった新たな取り組み(例・期間限定のポップアップストア出店)にチャレンジする企業もみられるなど、2024年はさまざまな変化がみられた年でもあった。
半面、既存のビジネスモデルでは消費者ニーズをとらえづらくなってきた危機感もみられる。最大手のポーラの直近業績では、ポーラブランドの主力である委託販売チャネルの苦戦が顕著だ。同社はオンライン・オフラインを統合したビジネスモデルを構築し、ECや化粧品専門店など、ブランドへの入り口を多種揃えた上で、最終的にサロンへ誘導してロイヤルユーザーを獲得するべく事業改革を進めているが、大きな成果はみられていない。これに対し、同社は1月1日付で旧オルビス代表取締役社長の小林琢磨氏がポーラの代表取締役社長に就任した。小林新社長はこれまで、ディセンシア、オルビスとグループの各ブランドを手がけ、特にオルビスではDX戦略を推進して実績を残した。ポーラにおいても、「DX戦略の強化によるポーラブランドのテコ入れ、マーケットの拡大」という構想が読み取ることができる。これは、ポーラがコロナ禍当時から進めてきた戦略を順当に継承する流れであり、2000年代前半からの「脱・訪販」という方向性を現代のニーズに合わせた形で実現しようというものだろう。
世の中のトレンドという点で言えば、ポーラの戦略は正統派であるが、これは、団塊世代を中心としたベテラン販売員の〝切り捨て〟や〝取り残し〟にもつながり、経営側と現場の意識の乖離を招きかねない。多くの老舗企業でポーラと同様の問題を抱えながら抜本的な改革を行えていない最大の理由は、まさにその点に尽きる。別の視点では、創業から数十年を経た老舗企業では、トップの世代交代も増えてきた。新しい風が期待される一方で、先代トップが創業者の場合は、販売組織に対する求心力の低下が懸念される。コロナ禍が落ち着き、サロンビジネス改革の方向性もある程度見えてきた2025年は、訪販化粧品企業にとって正念場の年となりそうだ。