社説 〝ハイブランド〟の価値見直せ

 ダイレクトセリング化粧品分野では、最高級・最高峰クラスのブランドをテコ入れする動きがさらに強まっている。化粧品市場は以前からコストパフォーマンス重視のセルフ市場と、美容に高い関心をもつコア層をターゲットとした高級・高価格市場が注目を集めてきた。コロナ禍を機に消費者の価値観が多様化した結果、〝コスパブランド〟と〝ハイブランド〟の二極化がさらに進んでいる。
 昨今の化粧品市場の二極化は、ドラッグストアの多機能化と連動している側面をもつ。生鮮食品から医薬品、日用品と幅広い品揃えで来店を促すドラッグストアは、化粧品企業にとっても有力な販路の1つだ。ダイレクトセリング企業においても、訪販組織とは別展開でセルフ市場に進出している企業は少なくない。ノエビアでは、セルフ化粧品部門の看板ブランド「なめらか本舗」は、化粧品事業の大きな柱となっている。〝コスパブランド〟と言っても消費者が求める機能性を盛り込んでいないわけではなく、「なめらか本舗」でも訴求力の高い機能性の1つである「シワ改善」成分を配合したアイクリームを1000円台で投入するなど、トレンドに合わせた展開を見せている。ナリス化粧品の「ネイチャーコンク」シリーズも、セルフ市場向けブランドとして人気を博している。LGグループ傘下のエフエムジー&ミッションでは、グループシナジーを活かして「VDL」などの韓国コスメをラインナップし、特に若年層のニーズ獲得を図っている。
 こうした〝コスパブランド〟の隆盛に対し、訪販系の化粧品は、高機能・高付加価値をうたい、いずれの企業も最新の研究開発技術の粋を集めた商品を上梓。価格帯も数万円クラス、中には10万円以上の超高級品も販売されている。そのようなアイテムを購入するのは、愛用者の中でも特にブランドへの信頼が厚いユーザーだが、ノエビアでは、最高峰ブランド「スペチアーレ」の薬用クリーム(税込11万円)の売れ行きが堅調で、化粧品事業の業績アップに寄与したという。他方、老舗企業では、サロンなど既存の顧客接点の減少に歯止めがかかっていないケースが見受けられる。ポーラは高付加価値路線を展開する筆頭とも言えるが、直近の第3四半期では、国内事業では顧客1人あたりの購入単価、顧客数ともにマイナス。高付加価値路線は、〝コスパブランド〝との差別化だけでなく、「サロン数の減少=顧客数の減少」を購入単価で補う意味合いもあるが、その戦略が必ずしも成功しているとは言い難い状況にある。
 訪販系の化粧品は、元来〝ハイブランド〟として扱われてきたが、それは化粧品の機能性だけでなく、販売員の手厚いフォローやカウンセリングなど、「人のつながり」がブランドの価値に大きく関わっていたことを忘れてはならない。

(2024年12月12日号)