社説 訪販の原点見つめ直せ

 1面(2024年11月14日付第1866号)で報じている通り、ダイレクトセリング化粧品市場では、「シワ改善」アイテムの投入が相次いでいる。特に、コロナ禍の中で老舗・大手各社が新製品を発売したり、既存アイテムのリニューアル時に「シワ改善」成分を新たに配合して機能性を強化する動きが顕著で、今後もこの流れは続くとみられる。
 「シワ改善」に関連する化粧品市場は、ここ数年増加傾向にある。富士経済がまとめた調査によると、「シワ改善」をうたった成分の1つである「ナイアシンアミド」を配合した商品の市場規模は、2023年時点で約1000億円。市場は年々拡大しており、2025年には1205億円にまで拡大するとみられる。コロナ禍の中で「シワ改善」関連の裾野が広がっていったのは、”おうち美容”のニーズが拡大したことや、マスク生活が長期化し、マスクで隠すことができない目もとのケアへの関心が高まったことなどが挙げられるが、それに加えて、コロナ禍以降、急速に冷え込んだ化粧品市場において、一定の売上を期待できる有力分野である「シワ改善」に各社がこぞって参入したことも指摘できるだろう。2017年にポーラが発売した「リンクルショット メディカル セラム」のヒットによって、「シワ改善」をうたった化粧品の認知度は急速に高まり、販売チャネルを問わず人気のジャンルとなった。もともと、エイジングケアは美白と並んでスキンケア市場の2大カテゴリーであったが、「シワ改善」という明確な機能性のインパクトは大きかったと言える。
 とあるダイレクトセリング企業のスタッフは、「分かりやすい機能性をうたえる『シワ改善』アイテムは、販売する側にとってもメリットがある」としながらも、「クチコミや実際のカウンセリング、スキンケアをお客様と直に触れ合うことができるダイレクトセリングでは、『シワ改善』アイテムの有無がブランドの優位性を左右するとは考えていない」としている。コロナ禍では、ダイレクトセリング企業においてもオンライン・オフライン双方の活用が進み、特にEC分野への展開に積極的なケースが散見された。裏を返せば、それまで主要チャネルであったサロンというリアルの顧客接点の活用率が大幅に減少した結果、対面せずとも販売できるオンラインチャネルに糸口を見出そうとしたものであり、現在では再びリアル接点へ回帰する動きが強まっている。
 「シワ改善」アイテムの台頭は、ダイレクトセリング分野においては、販売チャネルの変容と連動したものであり、”分かりやすさ”を求めた結果とみることもできる。コロナ禍が収束しても市場回復が停滞している現在、今一度、このビジネスの原点を見つめ直す必要があるのではないか。