社説 電子化実態調査 「見直し」提言の行方は
昨年、特定商取引法の「書面電子化」制度がスタートして1年以上が経過した。しかし、本紙既報の通り、消費者庁による実態調査結果は、制度を利用している事業者は「ほとんどいない」と報告。理由は明らかで、何段階にもおよぶ煩雑な確認・説明手続きが事業者に義務付けられたことにある。
一方で報告書は、現行の手続きが制度活用の障害となっていることを踏まえ、「消費者保護の視点を前提」としつつ、「より消費者の利便性や事業者における実施可能性が高い制度の在り方を検討することも考えられる」と提言した。
報告書が提言する検討事項は大きく3つ。その1つが、法廷書面の電磁的交付を受けることに消費者から承諾を取得した際、そのことを「証する書面」を電磁的方法で提供できる対象の拡大だ。
現行のルールは「証する書面」を紙媒体で渡すことを義務付けており、完全デジタル化を阻む最大の障壁となっている。概要書面とオンライン完結型の特定継続的役務提供における契約書面は、すでに、「証する書面」を電磁的方法で提供することが許されている。したがって、他の取引類型における契約書面の「証する書面」が拡大の候補にあがることとなり、事業者にとっては完全デジタル化の道が開ける可能性がある。
他の2つの検討事項は、概要書面の交付が必要な類型における消費者の手間の低減と、消費者のデジタル適合性を確認する要件の簡素化。
3つ目は、消費者1000人を対象に模擬サイト等を使って実施した理解度調査の結果を踏まえたもので、ユーザビリティの低さが消費者の認知負荷を高めており、契約内容の正しい理解を妨げているとして、簡素化を提言している。
電子化を導入した改正法は所謂「施行2年後見直し」規定をもち、来年6月に2年が経過する。見直しの場が設けられた場合、提言された検討事項が議題として浮上するかどうかが注目点になる。
ただ、可能性はゼロでないものの低いと言えそう。現行ルールの原案を作成したプロセスにおいて、数々の確認・説明手続きを要求した消費者団体・法曹サイドの強い反発は必至とみられるからだ。
原案をまとめた有識者会議の委員は11人中7人が同サイド。残りは2人が事業者団体、1人が業界団体に近い弁護士、1人がITリテラシー・技術の専門家。当然のごとくルールを厳しくする要請で話が進み、事務局を務める取引対策課もその方向で応じた。報告書は消費者庁が自ら着手した調査の成果であり無視できない。ただ、消費者団体等の”説得”という困難をどうするか。事業者サイドの働きかけも問われる。
一方で報告書は、現行の手続きが制度活用の障害となっていることを踏まえ、「消費者保護の視点を前提」としつつ、「より消費者の利便性や事業者における実施可能性が高い制度の在り方を検討することも考えられる」と提言した。
報告書が提言する検討事項は大きく3つ。その1つが、法廷書面の電磁的交付を受けることに消費者から承諾を取得した際、そのことを「証する書面」を電磁的方法で提供できる対象の拡大だ。
現行のルールは「証する書面」を紙媒体で渡すことを義務付けており、完全デジタル化を阻む最大の障壁となっている。概要書面とオンライン完結型の特定継続的役務提供における契約書面は、すでに、「証する書面」を電磁的方法で提供することが許されている。したがって、他の取引類型における契約書面の「証する書面」が拡大の候補にあがることとなり、事業者にとっては完全デジタル化の道が開ける可能性がある。
他の2つの検討事項は、概要書面の交付が必要な類型における消費者の手間の低減と、消費者のデジタル適合性を確認する要件の簡素化。
3つ目は、消費者1000人を対象に模擬サイト等を使って実施した理解度調査の結果を踏まえたもので、ユーザビリティの低さが消費者の認知負荷を高めており、契約内容の正しい理解を妨げているとして、簡素化を提言している。
電子化を導入した改正法は所謂「施行2年後見直し」規定をもち、来年6月に2年が経過する。見直しの場が設けられた場合、提言された検討事項が議題として浮上するかどうかが注目点になる。
ただ、可能性はゼロでないものの低いと言えそう。現行ルールの原案を作成したプロセスにおいて、数々の確認・説明手続きを要求した消費者団体・法曹サイドの強い反発は必至とみられるからだ。
原案をまとめた有識者会議の委員は11人中7人が同サイド。残りは2人が事業者団体、1人が業界団体に近い弁護士、1人がITリテラシー・技術の専門家。当然のごとくルールを厳しくする要請で話が進み、事務局を務める取引対策課もその方向で応じた。報告書は消費者庁が自ら着手した調査の成果であり無視できない。ただ、消費者団体等の”説得”という困難をどうするか。事業者サイドの働きかけも問われる。