社説 一層の手厚いフォローこそ

  サロンビジネスを展開する企業の多くが、コロナ禍を機に転換を迫られている。それまで機能していた「地域の拠点に誘客してカウンセリング&販売する」というスタイルだけではニーズを獲得することが難しくなってきたことから、オンライン・オフラインの双方を活用した新たなアプローチ手法の構築が急がれる。
 「10年かけて変化する流れが一気にやってきた」とは、コロナ禍によって世の中のさまざまな分野で大きな変化があったことを受けて指摘された言葉だ。特にデジタル技術関連の発展と普及は目覚ましく、ダイレクトセリング業界でも、オンラインを活用したセミナーやイベントが積極的に行われ、現在でもオフラインとの併用する企業も少なくない。サロンビジネスの現在の苦境は、こうした世の流れに対し、従来のやり方が通用しなくなってきたことに起因している。消費者のEC利用が増加し、店舗に赴く機会が減ったことで、販売員と顧客のコミュニケーションのハードルが上がり、潜在需要の取りこぼしにつながった。リアル店舗・サロンはコロナ禍前と同様に営業しているものの、すべての客足が戻ったわけでなく、消費者の価値観やライフスタイルの変化は不可逆的なものとみられる。
 加えて、販売員の高齢化が苦境に拍車をかけている。高齢化し、引退する販売員が増えれば、当然営業網の弱体化につながるわけだが、抜けた分の販売員の補充はない。これはサロンビジネスだけの話ではなく、訪販市場全体を覆う課題だ。長年にわたって販売組織を牽引してきた団塊世代が、後期高齢者と呼ばれる年代となり、今後5~10年で大量離脱することは避けられないことから、ビジネスモデルの維持にも不安の声が聞かれるようになってきている。
 この問題に対して1つの方向性を打ち出したのがポーラだ。つまり、従来型のサロンを展開しつつも、デジタル利用の比率を高めたビジネスモデルを構築することで、販売員不足による営業網の弱体化を食い止める狙いだ。同社が標榜しているOMO戦略サロンはその象徴で、今後の試金石となるとみられる。また、昨今攻勢を強めている化粧品専門店への出店もその1つだ。公式アプリや「ポーラ プレミアム パス」と横串に、さまざまなチャネルで顧客にアプローチし、最終的にリアル店舗に導いてカウンセリングや施術、販売を行っていくというのが、ポーラが構想する「次のステップ」だが、シニア世代の販売員が新しいスタイルに馴染むのは相当にハードルが高いと言わざるを得ない。
 実際、ベテラン販売員の引退は続いていることから、長年活躍してきた販売員の、“切り捨て”とならないよう、より一層の手厚いフォローが必要だ。