社説 最古参ブランドの再起は

 経営再建中だった米タッパーウェアが日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11章の適用を申請した(1面参照)。縮小を続けるダイレクトセリング事業の立て直しを図りつつ、店舗ルートやオンライン販売に乗り出していたが、数億ドルに達する負債が重荷となり、苦境を脱しきれなかった。CEOはデジタル・ファーストによる企業変革を推し進めるとの声明を公表。業界の最古参であり、世界中の誰もが知るブランドの再起の行方が注目を集めている。
 経営の苦境を背景とした取り組みは、17年に大型の事業再編に着手。その後、化粧品部門を中心に子会社の売却を進めてきた。経営危機が一気に表面化したのは昨年4月。ゴーイング・コンサーンに疑義がある旨を公表し、資本構造の抜本改革と新たな資金の調達を進める方針を示していた。再建への助言を得るCROも新たに迎えた。
 同社の株価は13年後半に80~90ドル台のピークに到達し、その後はDS事業の苦戦などを背景に下落。コロナ禍が始まった20年前半に一桁台を記録し、所謂「巣ごもり需要」で一時的に息を吹き返したものの、特需は長続きしなかった。
 最大の関心事はスポンサーが現れるかどうか。直近の業績は、証券取引所に対する提出の遅延が続いており、最新のデータは23年12月期9カ月累計となる。同期の監査前貸借対照表によれば、総資産6億7950万ドルから総負債12億390万ドルを差し引いた額は約5・2億ドル(約742億円)に達する。同社に対して債権をもつ銀行団やヘッジファンド、著名投資家から一部債権の放棄への理解を得るハードルは高い。
 業界の観点から注目されるのはDS事業の行方だ。同社は約40カ国に展開し、コンサルタントの総数は46・5万人以上に達する。ここには日本の事業と販売員も含まれる。CROは破産申請手続きの文書の中で、店頭とオンラインにあふれる安価な競合品に対して、同社の製品や販路が遅れを取っていた旨に言及。非DS販路の拡大は日本も3年前より推進。楽天への出店や大手百貨店、キッチン用品専門店での取り扱いを始めていた。米国ではターゲット、メイシーズといった百貨店に並び、アマゾンでの取り扱いを始めていたが、競合品との差別化に苦慮していたようだ。
 破産法が適用されることによって、事業売却等は第三者である破産管財人の管理下に入り、裁判所の承認を要することとなる。可能な限り現行のオペレーションに影響を及ぼさずに事業の継続を果たす可能性が開けたという見方も可能となる。何より競合品との競争は以前激しいものの、タッパーウェアというブランド価値は非常に大きい。ここに魅力を見い出すスポンサーは少なくないはずだ。