社説 規制強化案、業界の賛否の背景は

特定商取引法の”施行後5年見直し”などを根拠に、消費者系団体が強く求める不招請勧誘規制の強化と、連鎖販売の開業規制(参入規制)導入。このほど本紙が実施した業界アンケートは、いずれの規制案も、賛否を明確に示した企業の構成比で賛成派が反対派をわずかに上回った(8月15日号1面)。
 不招請勧誘規制の強化は事前拒否型(オプトアウト型)を主張するもの。この規制案の賛否を訊いた結果は、46%を占めた「賛成とも反対ともいえない」が最多だった一方、賛成も27%を占め、反対の22%に5ポイントの差をつけた。その理由として、賛成派からは「訪問販売の拒否を掲示している方への営業を禁じている」「現在、訪問販売で直接訪問することはほとんどない。顧客の要請で訪問している」「訪問を迷惑と事前に意思表示することで、予期せぬトラブルを回避できる可能性が大きい」といった声が聞かれた。
 一方で反対派は「オプトアウトの意思表示を確認する事が難しい」「ビジネス機会の大きな損失になる」「悪質事業者のために健全に事業を行う企業が過剰な規制を強いられる」「現行法で対応可能」などとしていた。
 国による登録・確認等の制度を想定した連鎖販売の開業規制は、37%を占めた「賛成とも反対ともいえない」がやはり最多。一方で賛成は29%、反対は21%となり、不招請規制よりも賛成派が大きく差をつけた。
 賛成派の主な理由は「トラブルを無くすため分かりやすい規制が必要」「今までが自由すぎた。ある程度のハードルが必要」「悪質事業者と住み分けが可能」など。反対派では「一般的イメージが更に低下し、参入のしにくさが助長される」「実質愛用者のディストリビューターの定義に影響が生じる」などの意見がみられた。
 2つの規制案に対する反対派の主な主張は、業界において従来から見られてきたもの。一方、賛成派の主張は業界の変容を反映したものと受け止めることができる。訪販は所謂飛び込み型がマイナーな営業手法となって久しく、住宅リフォーム系の悪質事業者はアウトサイダーと捉えられている。市場規模の縮小が続く連鎖販売は、マルチ商法という一般社会からの蔑視との決別を以前に増して望み、投資系マルチとの差別化も喫緊の課題とみなしている。
 繰り返しとなるが、もっとも構成比が高かったのは賛否保留派。したがって、業界の主流の意見が2つの規制案を警戒していることに従来と変わりはない。ただ、賛成派のボリュームが一定の規模を形成しつつある可能性も無視できない。今のところ2つの規制案に構う姿勢を消費者庁は示していない。が、情勢が変化した場合、賛成派の声から規制の行方に影響を生じる可能性も考えられる。