社説 瀬戸際の組織高齢化

「販売員の高齢化という問題は、来るところまで来てしまっているのかもしれない」。ある訪販化粧品企業のスタッフの言葉だ。本紙1面で報じているとおり、ダイレクトセリング化粧品企業では、”ポスト・サロンビジネス”の模索を目的に、さまざまな施策を実施しているが、老舗企業では事業の要である訪販チャネルの改革が進展していないケースが多くみられる。理由はさまざまだが、「販売員の高齢化に伴う組織力の低下」が大きな障壁となっている場合がほとんどだろう。
 ドア・ツー・ドアなど従来型訪販から、現在のサロンビジネスへの移行の兆しが見え始めていた2000年代前半から、「販売員の高齢化」については、さまざまな指摘がなされていた。もともと訪販、特に訪販化粧品というビジネスは、高度経済成長期に大きく伸長してきた。現在ほど女性の社会進出が多くなかった時代において、”家庭の主婦”が多かった女性の力を借りて、クチコミベースで愛用者の輪を広げてきた。そのあり方は時代の変化とともに柔軟に姿を変え、在宅率の低下などを背景に、地域に根ざした拠点としてサロンを設け、「目に見える訪販」として、市場規模は縮小しつつも定着してきた。そのビジネスモデルがコロナ禍によって大きな変更を余儀なくされ、試行錯誤を繰り返してきたのが、現在の状況だ。
 従来型訪販からサロンビジネスへの移行が、市場全体を巻き込むパラダイムシフトであったとするなら、現在の状況も、再び大きな変革を求められる時期に来ていると言える。しかし、大きく異なるのは、主力の訪販組織の営業力が、20年前に比べて低下しているという点だ。高度経済成長期からバブル期~現代に至るまで、組織の基盤を担って団塊世代の販売員がこのところ急速な勢いで引退しており、若い人材の確保など、打開策がそれに追いついていないからに他ならない。無論、そうではない老舗企業もある。例えば、祖母、母、娘の3世代の愛用者も少なくなく、販売員・愛用者に年齢の偏りがないワミレスコスメティックスや、当初から比較的上の年代を想定して製品開発を行い、ブランドを築いてきたアシュランのような企業がそうだろう。しかしながら、市場全体を俯瞰すると、リーディングカンパニーとして業界をけん引してきたポーラでさえ、「販売員の高齢化」に直面し、苦戦しているのが厳しい現実ではないだろうか。
 前出の訪販企業スタッフは、「皆、問題を分かっていながらも、どうすれば良いか明確な回答を得られずここまで来てしまった」と述べた。今後数年で、団塊世代の販売員の離脱は一層進むとみられる。これ以上の先延ばしはもはや出来ない瀬戸際にあると言えるだろう。