社説 フリーランス新法、進む対応

このほど本紙が実施したフリーランス新法の認知度等の業界アンケートで、訪問販売の委託販売員や連鎖販売取引のディストリビューターとの取引関係に新法が適用される可能性を4割強の企業が調査したか、着手を予定していることが分かった(8月1日号参照)。
 DS業界は現状においても特定商取引法で厳格に縛られており、一定額の資本金を積む企業は下請法の適用も受ける。
 一方、新法は業種・業態を横断した適用が特徴。下請法のような資本金要件はなく、フリーランスの働く権利を保護することを目的とする。これまでの取引関係が適用を受ける可能性が高いことは確かで、新法に特有の禁止・義務事項にも注意を払う必要がある。
 本業もしくは副業でフリーランスとして働く人口は、総務省の調査で約257万人(22年時点)。自由な働き方が可能とされる一方、仕事を委託・発注する側に対して相対的に弱い交渉力や情報収集力、一方的な報酬の減額といった不当行為が指摘されてきた。これを是正する目的で11月1日に施行される。
 アンケートで聞いたフリーランス新法の認知度は有効回答企業の67%。7割近くに達し、新法の中身を知らなかったり、名称を聞いたことがある程度だった企業の構成比を大きく上回った。今年初頭~春の段階の本紙取材で、新法を認知していた企業が皆無に近かった経緯を踏まえると、施行時期が迫ったこともあって関心を大きく高めていることが窺える。
 アンケートでは、自社の製品・サービスの販売、新客開拓等を担う委託販売員やディストリビューターとの取引関係がフリーランス新法の適用を受けるかどうか、調査や検討を行ったかも調査。全体の40%が調査・検討を行っていないとした一方、すでに調査・検討に行っていたり今後の実施を予定するとした回答は43%に達し、未着手の構成比を上回った。
 特商法は訪販系企業と委託販売員の取引関係を規制しておらず、連鎖販売の民事ルール等は前提として会員を消費者とみなしている。また、資本金が1000万円以下の企業は下請法の適用を受けない。このような現状の狭間にフリーランス新法が入り込んでくる可能性の高さを業界が認識し始めている。
 フリーランス新法は、相場に比べて著しく低い報酬やフリーランスに責任を問えない報酬の減額、正当な理由がない物品の購入や役務の提供・利用の強制などを禁止している。アンケートでは、禁止事項に関する調査・検討を行うか、今後予定する企業は32%にとどまった。こういった具体的な規制の中身ついては、業界の対応はまだ遅れが窺える。施行までの2カ月半の間に急ぎ、対応を進める必要がある。