社説 「エステJIS」の影響どこまで

エステティック業界の第三者機関である特定非営利活動法人日本エステティック機構(略称・JEO)が、昨年から「エステティックJIS」(仮称)の策定に向けて動き始めている(本紙7月18日号既報)。訪販化粧品系のサロンにどのような影響があるのか、状況の変化に注意を払う必要がありそうだ。
 JEOは、エステティック業界の適正化を目的に2004年に設立された。エステティックサロン認証制度を柱に、エステティシャン試験制度認証、エステティック機器認証の各制度を運営し、今年で設立から20年を迎える。特にサロン認証制度は、当時から消費者トラブルが絶えなかったエステティック業界の健全化と、消費者の信頼確保を旗印に策定された。認証を受けたサロンには、いわゆる「マル適マーク」を付与し、サロンの質を一定以上に維持し、消費者のサロン選びをサポートするという狙いがあった。2007年のスタート時は、約250のサロンが認証を受けた。その後、順調に数を増やすかと思いきや、申請数は伸び悩みながら増減を繰り返し、現在は239サロン(30事業者)と、スタート時とほぼ変わらない状況にある。エステティック業界は、昨今も脱毛サロンの倒産に伴う消費者相談が増加し、2022年度には2万件を超えた。健全化を掲げながら、業界全体に対して大きな影響力を確保できていないのがJEOのサロン認証制度の実情であろう。
 そこに来て、「エステティックJIS」(仮称)の策定だ。開発名称は「エステティックサロンのマネージメント及び品質管理に関する一般要求事項(仮称)」で、2026年の導入を目指すという。もともとJEO自体、経済産業省がサービス産業の発展を目的に行った「エステティック産業の適正化に関する検討会」での話し合いを土台に設立が進められた第三者機関だ。今回も、経産省からJEOに制度のJIS化の話をされたことがきっかけになったという。JISは、日本国内の産業標準化の促進を目的とする産業標準化法にもとづき制定される任意の国家規格であり、我々の日常生活のあらゆる場面で活用されている。JEOでは、エステティックサービスの産業標準化を進めることで、業界のさらなる健全化を図るとともに、ルールの方向性を統一化、明確化したいとしている。
 JIS化の狙いは理解できるし、実現すれば現状の認証制度以上の力を期待できるかもしれない。しかしながら、設立から20年を経て、認証サロンをほとんど増やしていない制度を基盤とした「エステティックJIS」(仮称)に、サロン当事者、関連業者にどこまで影響力をもたせることができるのか、現状では不透明な部分が大きすぎると言わざるを得ない。