社説 連鎖参入規制、政府見解の今後は

連鎖販売取引への参入規制(開業規制)の導入を問うた野党議員の質問主意書に対し、否定的見解を示した河野太郎前消費者担当大臣の答弁を踏襲する答弁書を政府が決定した(7月11日号1面参照)。答弁は昨年3月のもの。現職の自見英子大臣も昨年11月、国会で特定商取引法の改正に否定的な答弁を行った。消費者系団体を中心に提唱されている参入規制論が表舞台に出てくる可能性は当面、低そうだ。
 質問主意書は、韓国やタイ、米国の一部の州が連鎖販売に対して登録制や届け出制を設けており、連鎖販売事業を行うための「参入規制を厳しくし、情報の開示を行うことで、悪徳業者の参入障壁を作ることができる」と主張。政府が登録制など参入規制の導入を検討しているかどうかを質問していた。
 これに対して、閣議決定された答弁書は、昨年3月30日の衆院・消費者問題特別委員会で、別の野党議員が連鎖販売の参入規制に対する政府見解を訊いた時の河野前大臣の答弁を引用して、「(河野前大臣が)答弁したとおり」と回答した。
 引用した答弁で前大臣は、参入規制は「(政府が)審査しなければなりませんので、かなりの行政コストがかかります」「行政コストとその効果が見合うのかどうかというところは若干疑問」「登録を認めると(中略)国が特定の連鎖販売業者に事実上のお墨つきを与えることになる」として、「余りいい案ではない」と述べていた。
 この答弁で前大臣が述べた、”行政コスト論”と”お墨付き論”は、訪問販売を含む参入規制のアイデアが有識者会議等で議題に浮上する度、規制に消極的な行政サイドが言及してきた。したがって、閣議決定で引用された”河野答弁”は、現時点の政府見解というだけでなく、消費者行政の内部で長く保たれてきた方針が改めて示されたと言い換えてもよい。
 ただ、この見解が今後も維持されるかどうかは、はっきりと言い切れない。
 例えば、2年前より、消費者系団体が連合した「全国連絡会」が、連鎖販売の参入規制を含む特商法改正運動を積極化。この働きかけで、全国の地方議会から改正の議論を求める意見書の発出が相次いでいる。
 消費者委員会は4月、25~29年度の5カ年を対象とする次期「消費者基本計画」において、「マルチ商法の参入規制」の導入が「望まれる」とした意見書を公表。いわゆる”後出しマルチ”は「抜本的な対策が望まれる」と踏み込んだ。
 「ジャパンライフ」事件後、政府は預託法の見直しに難色を示していたが、国会で「桜を見る会」問題をきっかけに火がつき、法改正に手のひら返しした。火種が巻かれている限り、着火の可能性を捨てきれない。