社説 〝切り捨て〟とならぬフォローを

少子高齢化による影響がさまざまな分野で深刻さを増す中、ダイレクトセリング化粧品分野でも販売員の獲得は大きな課題となっている。長年にわたって販売組織を牽引してきた団塊世代が、後期高齢者と呼ばれる年代となり、今後5~10年で大量離脱も懸念されており、既存のビジネスモデルの維持にも不安の声が聞かれるようになってきた。
 最大手のポーラは、現在約2・3万人の委託販売員(=ビューティーディレクター)を擁している。数十万人という人数だったポーラレディ時代に比べると大きく数を減らしているが、これは、いわゆる愛用者的販売員を除き、「美容のプロフェッショナル」として委託販売員を定義し直したことによる影響が挙げられる。ただ、それだけではなく、昭和の時代からビジネスを支えてきた販売員が高齢化などの理由によって引退していること、新規の販売員加入がそれに追いついていないことが大きい。もっとも、販売員の高齢化や後任の若手販売員の確保という問題は今に始まった話ではなく、少なくともサロンビジネスが潮流となる兆しが見え始めた2000年代前半には、既に指摘されていた。問題を認識しながらも、有効な手立てを打てないまま、いよいよ水際近くまで来たというのが現状だろう。
 ポーラは近年、美容に高い関心をもつ若年層をリクルートする手法として、「リクルート・フォーラム」などの間口を設け、教育制度や福利厚生といった”働きやすい環境”を整えて訴求している。また、ビジネスモデルそのものも、若年層が入りやすい仕組みへあり方を変えつつある。時代は移り変わり、ドア・ツー・ドアのような従来型の訪問販売というスタイル自体を知らない世代も増えてきた。コロナ禍の中で培った「オンラインとオフラインの融合」を軸に、OMOを「次の一手」と位置づけるのは、確かに有効な手段となり得ると思われる。
 その一方で、高齢化して以前に比べて営業力が低下したとはいえ、まだまだベテラン販売員の力は小さいものではない。ポーラブランドにおける委託販売チャネルの売上は6割を占め、近年シェアを増やしているECに比べても大きな存在感を示している。同社のOMO戦略は、最新のデジタル技術や膨大な肌のビッグデータを強みとしたものであり、営業現場でもデジタル端末を積極的に活用する必要がある。同社が今後ターゲットとしていく若年~ミドル層はこれらのツールにも柔軟に対応できるとみられるが、デジタル端末に慣れていないベテラン販売員にはハードルが高いだろう。ともすれば、「ついていけない」と引退するケースが増えかねないのではないか。”切り捨て”とならないよう、一層の手厚いフォローが必要とされている。