社説 フリーランス新法、業界も無関係に非ず

いわゆるフリーランスの保護を目的とした「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下フリーランス新法)の施行日が11月1日と決まった。対象の業種・業態は幅広く、独占禁止法や下請法に優先して適用。政省令案のパブリックコメントでは、「副業」「アフリエイト」の取引が場合によって対象となる見解も示された。ダイレクトセリング業界の関心が高まっている様子は窺えないものの、委託販売員やディストリビューターとの取引と新法の関係を改めて精査すべきだろう。
 仕事を委託・発注する側の禁止・遵守事項を定めた政省令は5月31日に公表され、原案から実質的変更はなかった。禁止事項の一例は、フリーランスに責任がない報酬の減額や著しく低い報酬額の設定。遵守事項は報酬額などの取引条件を直ちに明示することなどが定められた。
 政省令と同時に公表されたパブコメ結果では、フリーランス新法の適用範囲の見解も示された。一つは「副業」。企業に勤める従業員が別の企業から業務を委託されて行う「副業」は、新法の「業務委託」に該当する場合、従業員が新法の保護対象である「特定受託事業者」に該当し得えるとされた。
 いわゆるアフリエイトビジネスにおいても、アフィリエイターのSNS投稿を経由して企業が売上を得て、アフィリエイターに報酬が支払われる取引は、アフィリエイターが「特定受託事業者」に該当し得るようなら適用対象になるとされた。
 BtoBの取引における不当行為は、従前より独禁法と下請法の対象。一方、業務の受託者がフリーランスなら、フリーランス新法の適用を優先していく方針がガイドラインで示されたことも注目される。この方針は、あくまで原則であり、最終的な判断はケースバイケースとされているが、優先適用の方針自体は変わらない。
 業界でも販売現場との関係で意識されることが少なくない下請法は、委託・発注側の資本金が1000万円以下の場合、適用されない。しかし、フリーランス新法は資本金を要件に持たないため、場合によっては”出番”の可能性がある。
 11月の施行を見据えた執行体制は、公正取引委員会が「フリーランス取引適正化室」を新設し、取引適正化担当の審議官を配置。関連相談を受け付けるとともに、違反疑いがある案件の調査・措置に着手していく。4年前より稼働する「フリーランス・トラブル110番」は、施行後も、フリーランス新法の対象外の相談を受け付けていく予定。相談の対応・支援の中身は従来と変わらず、弁護士によるあっせん・和解などが行われる。施行に向けた行政サイドの体制の整備が着々と進む中で、業界も無関係とは言えない状況を認識すべきだろう。