社説 特商法の実態調査結果、消費者庁は公表を

 特定商取引法の運用や訪問販売等の海外規制を委託形式で調査した消費者庁が、調査結果の公開を拒んでいる(前号1面参照)。特商法のあり方を検討する内部資料であり、基礎調査に過ぎない旨を述べるが、数千万円の税金が投じられた。調査の性質を考えれば、機密扱いの情報が含まれるとも考えにくい。
 消費者庁は昨年度、特商法に関係する3テーマの調査を実施。一つは、昨年6月に始まった「書面電子化」で、事業者アンケートやWEBサイトの目視調査、覆面式の試買調査などを行うとしていた。1000人以上の消費者を対象に模擬サイトを活用した調査も行うとしていた。
 二つ目は、インターネット・デジタルを用いた消費者取引に関わるトラブルへの対処について、海外主要国の実態を調べる事業に、訪販等の不招請勧誘規制と連鎖販売取引の開業規制の調査も盛り込んだもの。各国の「DoNotCall」や韓国の連鎖登録制度への言及が含まれるとみられていた。
 さらに徳島の新未来創造戦略本部も、7取引類型の海外における規制状況の調査を実施。これら3テーマの委託費用は税別ベースで計約4000万円に達する。これだけの税金を投じておきながら、消費者庁は「内部の検討用の資料」と返答。WEBサイト等に「掲載するとかいうものではない」と公表を拒んだ。同庁長官も定例会見で「あくまで基礎的な調査」で、「調査結果自体を発表することに意味があるとは考えていません」とした。
 しかし実は、消費者庁による委託事業の調査結果が表に出た前例はある。一例が、14年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託した「特定商取引にかかる被害実態の分析調査および条例 調査報告書」。ここで、条例によって所謂「訪問販売お断りステッカー」が有効化されている都道府県の状況を報告。その内容は、不招請勧誘規制が大きなテーマとなった15年の消費者委員会・特定商取引法専門調査会で参照され、議論の材料となった。
 これより前の11年にも、やはり三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託して取得した「マルチ取引に係る実態調査  相談事例の整理・分析及び米国における規制状況等について 調査報告書」が外部に明らかとなった。ここでは、同年の国内の「マルチ取引」を相談分析し、相談の内容と消費生活センターの対応状況がまとめられた。米国の連邦・州レベルのMLM規制についても最新のデータが伝えられた。
 過去のいずれの調査結果も訪販、連鎖の法規制の行方に大きく関わり得た内容。消費者庁が昨年度に実施した3テーマの調査も同様の可能性を含んでいることが考えられる。結果の公表が当然だ。