電子化実態調査 DS業界の声、反映した見直しを

 前号で伝えた通り、特定商取引法の「書面電子化」規定の利用状況の調査をめぐって、特定継続的役務提供のみを対象とすることを予定していた消費者庁が方針を転換し、訪問販売など他の5取引類型も含む調査に乗り出していることが分かった。調査で得られたデータは、電子化規定の”施行2年後見直し”で参考とされる可能性が高い模様。電磁的交付のルールは、国や消費者系団体、一部事業者の思惑が絡み合った結果、複雑怪奇としか言いようがない代物になってしまった。来年6月に到来する”施行2年後見直し”のタイミングでは、実態調査で寄せられたDS業界の意見を反映した見直しが求められる。
 委託形式で行われる実態調査の実務は、1800万円(税抜き)で落札したNTTデータ経営研究所が担当。ここから、日本訪問販売協会をはじめとする特商法関係の業界団体を通じて、加盟企業へのオンラインアンケートが依頼されている。アンケートで訊ねている項目は、企業名や実施する取引類型、法改正で電子化が可能となったことへの認識、実際の電子化への対応状況など。電子化に踏み切っていない場合は、その理由なども聞いている。
 このアンケートにおける最大の注目点は、電子化を「行っていない」理由が、どれほど具体的かつ詳細に寄せられるかだろう。本紙が昨年7月に実施した電子化に関する業界アンケートでは、有効回答の93%は電子化を行っていないか消極的で、前向きだった残り7%も結局は踏み切っていない。
 理由は明らかで、政省令であまりにも複雑な手続きが定められたからだ。消費者のデジタル適合性の確認や紙媒体による承諾の取得、電子書面の到達確認、求められた場合における第三者への同時送信など、上げ出せばきりがない。NTTデータ経営研究所から協力を依頼された訪販協でも、昨年秋に実施したアンケートにおいて、ほとんどの加盟企業が電子化に消極的な姿勢を示したという。
 したがって、今回の実態調査で得られるデータは、電子化を行っている企業の利用状況ではなく、電子化を行えない理由やその解消のための注文・提言に偏る可能性が高い。デジタル媒体で承諾を取得することを許されている特定継続的役務提供では、実際の電磁的交付の事例が得られる可能性も考えられるが、標本数としては決して多くならないだろう。
 実態調査は、消費者を対象に模擬サイトを使って、電磁的交付の手続きを疑似体験してもらい、説明義務事項の閲覧状況や理解度なども調べることとされている。ただ、ここで得られるデータは、あくまで仮想の結果。重視されるべきは、電子化をやりたくてもできない事業者サイドのナマの声ではないか。