つながりこそ不変の強み

 2020年から始まったコロナ禍は、2023年でようやく1つの区切りがついたと言える。この間、消費者のライフスタイルは多様化し、ダイレクトセリング業界も、 ニーズの多様化に合わせた商品やサービスを生み出してきた。デジタル・オンライン施策の導入が急速に進む中で、2023年はリアル施策へ回帰する動きも活発化した。 だが、「アフターコロナ」の現在、人々の価値観が大きく変化したように、コロナ禍前の社会へ完全に戻ることはない。時代の流れに対応した商品・サービスを提供することが、 各社に求められている。
 ダイレクトセリング化粧品分野では、20年以上にわたって、サロン展開が従来型訪販に代わる販売チャネルとして浸透してきた。 コロナ禍で対面での活動が制限されたことで定石が崩れたが、デジタル・オンライン施策を積極的に導入することで顧客とのコミュニケーションを図り、 新しいサロンのあり方も見えてきた。人と人がつながる対面販売は現在も主軸であることに変わりはないが、多様な接点をもつことは有用だ。各社は、 公式アプリやSNSといったデジタルツールを用意し、従来の対面方式ではアプローチができなかった潜在需要、特に若年層に対しても積極的に訴求する動きがみられる。 また、この3年間で、自宅でのケアを提案する〝おうち美容〟など、多様な施策も生まれた。「ジェンダーレス」など近年のトレンドを追い風に、 年齢や性別を問わず幅広い層に美容を提案できる空気が醸成されたのは、コロナ禍の中で人々の価値観が多少なりとも変化したことが影響しているとみられる。
 消費者のライフスタイルや価値観は大きく変わったが、つながりを求める点はどのような時代になっても変わらない。サロンビジネスでは、 コロナ禍で希薄となった顧客との関わり方が課題となっているが、他方でオンラインカウンセリングや各種イベントは、諸事情で外出ができない人や、 遠方のため縁が途切れがちな人ともつながることができる点が大きなメリットだ。行動制限を強いられた不自由な時期を経験したからこそ、 これまで見逃していたポイントが改めて明らかになったという側面がある。リアルの対面販売で培ってきたノウハウを、デジタル上でも有効活用できているわけだ。 同時に、施術やより詳細なカウンセリングなどは、リアルでの対面の方が満足度は高い。今後、リアル・デジタルの両施策をどのようなバランスで活用していくかが、 コロナ禍を経て転換期を迎えたサロンビジネスのカギを握っている。
 いずれにしても、顧客との接点が変わっても、人と人のコミュニケーションがこのビジネスの付加価値であることは不変だと言える。