「電子化」実態調査 訪販、連鎖を「除外」の理不尽

  10月10日号1面で伝えた通り、改正特定商取引法の「書面電子化」規定に基づく法定書面の電磁的交付の実施・利用状況について、消費者庁が予定する実態調査が、 特定継続的役務提供(以下特役)のみを対象に行われようとしている。調査対象から除外される訪問販売、連鎖販売取引などの5取引類型は、〝特例待遇〟を受ける特役に対して、 3年前の電子化発案段階から事ある毎に不公平な扱いを受けてきた。なぜ、調査を特役に絞る必要があるのか。
 実態調査は民間に委託して実施。事業者へのアンケートとヒアリング、WEBサイト等の目視調査、覆面形式の試買調査を予定する。特商法を所管する消費者庁の取引対策課は、 最後の試買調査を特役に限定する理由に説明。「(特役が)試買調査を一番行いやすい」「例えば、訪問販売だと不意打ち性の部分が前提にある。試買を行うとしても、どうやって訪問してもらうか」 「調査目的を明かすと調査の意味が失せる」とする。
 しかし、アンケートとヒアリング、目視調査の3つは、覆面である要件を必要としない。また、試買調査の予定事業者数は2社前後のため、広く実態を知るという観点から言えば、 必ずしも必要とされないとさえ言えるはず。試買調査を理由に、訪販など5類型を対象から外す説明は納得がいくものではない。
 しかも、取引対策課によれば、調査結果は、電子化規定の“施行2年後見直し”で参考とすることも見据えた取り組みという。そうであれば、特役のみに偏った調査結果では、 他の5取引類型の実態が見直しに反映されない可能性が出てくる。見直しの際、より実態に即した検討が行われる必要があることを踏まえると、やはり訪販等の除外は問題がある。
 調査をめぐる不可解さは、ほかにも指摘できる。1000人以上の消費者を対象に、〝模擬サイト〟を利用して、電磁的交付に関する一通りの手続きを体験してもらい、 理解度などを問うテストを予定している点だ。特商法において、出来たばかりのルールの「使い勝手」を確かめるような調査は異例。昨年より可能となった電磁的クーリング・オフでも、 このような調査は行われていない。
 業界関係者の間からは「国の上層部から命じられて押し通した電子化が、フタを開けてみれば利用されていない。もし、空振りに終わったなら、責任を問われる」 「それが気になってしょうがないため、わざわざ調べるのではないか」「特役だけでも、利用しやすいモデルケースを作りたいのではないか」という声が聞こえる。
 取材では、特役に限定すべき正当な理由が見当たらない以上、5取引類型も対象に含む調査を行うべきとする意見がほとんどを占めた。同感だ。