独自性の訴求こそ

    ダイレクトセリング化粧品市場では、コロナ禍の中で、〝おうち美容〟のような高付加価値品に対する関心が強まった。現在、 ハイブランドを投入・強化する取組みが各社でみられるようになってきた。
 ポーラは近年、最高峰ブランド「B.A」を筆頭に、シワ対応ブランド「リンクルショット」など高付加価値品の訴求を強めてきた。 10月1日には、新美容液「BAグランラグゼⅣ」を発売する。価格は約8万円と、高価格帯ブランドが多いダイレクトセリング化粧品分野のアイテム群の中でも、 頭1つ抜けた価格設定だ。マーケットは国内需要だけでなく、中国をはじめとした海外でも展開することから、美容に高い関心をもつコアユーザーだけでなく、 海外の富裕層にも攻勢をかける狙いがあるとみられる。
 「グランラグゼ」という美容液は、今回で4代目だが、リューアルの度に最新の研究成果をフィードバックしてきた。今回は、肌の細胞が分裂を休止している「G0期」に着目し、 産生が高まるコラーゲン(コラーゲン6)を活性化させる仕組みを盛り込み、オリジナル複合成分として、「姫蒲G0エキス」を配合した。 パッケージにも日本古来の〝折って包む〟文化を取り入れ、差別化を図っていることからも、海外マーケットでの需要獲得を見据えていることが予想できる。
 ナリス化粧品では、最高級ブランド「セルグレース」の強化を進めている。2023年1月21日には、6代目の「セルグレース」を投入、8年の研究開発期間を費やして、 「相反するものの融合」を実現して新たなスキンケア体験を提供している。
 新「セルグレース」の中でも特徴的なのは、「デュプレ クリーム」で、2つに分かれたクリームとして提供することで、使用直前に適度に混ぜることができ、 理想的な使用感と肌の仕上がりを得られるアイテムとなっている。「肌の表面の乾燥を防ぎたい」と「栄養分を肌の深くまで届けたい」、 肌の仕上がりに求める「しっかりとした肌の深くが詰まっているようなギュッとしたハリ感」と「ぷるんと柔らかいハリ感」といった、〝異なるけれども両方叶えたいという願い〟 を叶えるための研究は、8年もの歳月をかけ、200回を超える試作を経て製品化に至った。〝タイパ〟など、何かと効率が求められる現代において、 あえて〝使用者が直前に混ぜるという手法〟を採用することで、独自性と高い満足度を提供するアイテムとして完成したという。
 化粧品市場では、多機能かつリーズナブルなアイテムと、高機能・高付加価値アイテムでの二極化が進む。ジェンダーレスなど新しいトレンドも生まれており、 独自性の訴求が以前にも増して求められていると言える。