多様性重視の施策こそ

    ダイレクトセリング化粧品市場では、〝アフターコロナ〟の流れを追い風に、スキンケアやメーク品の復調にも期待感がかかる。業績面では一進一退が続いているが、 明るい兆しも見え始めている。
 ポーラ・オルビスホールディングスの2023年12月期第1四半期では、連結ベース売上高が前年同期比11.9%増の421億3600万円と回復。 このうちポーラブランド売上は同13.9%増の241億8300万円と2ケタ増となった。最高峰ブランド「BA」や、 シワ対応「リンクルショット」シリーズなどを軸に巻き返しを図っている同社は、リアル施策とオンライン施策のハイブリッド化を進めてきた。 委託販売チャネルにおいて事業の核となっていたポーラ・ザ・ビューティーなどの店舗は、リアル接点として未だ強固であるものの、コロナ禍の影響を大きく受けた。一方、 EC経由では新規顧客の増加がみられ、消費行動の多様化とともに、重要性が増してきている。同社は、販売チャネルごとに異なっていた顧客IDを統一化し、 全方向で顧客接点を強化している。サロン展開では、公式アプリを活用した情報発信を行うことで、顧客へのフォローアップも行う。新しいコンセプトのショップをオープンするなど、 リアル施策回帰への動きもみられる。ダイレクトセリング化粧品最大手である同社の施策は、市場全体への影響も少なくないことから、今後の動向が注目される。
 シーボンでは、昨年から若年層にフォーカスしたブランドを投入するなど、新しい動きを見せているが、業績面では、2023年3月期において、売上高が前期比6.9%減、 営業損失が1億4500万円となった。同社もまた、コロナ禍でサロン営業が打撃を受け、ニューノーマルに対応した取り組みを行ってきた。その結果、 リアル施策も復調の兆しがみられ、サンプリングや肌チェックを通じたイベントでの新規顧客の集客数は、前期に比べて4割増しとなった。 インフルエンサーマーケティング等のWEBを活用した集客や、製品をタッチポイントとした集客活動も行い、直営店舗における新規売上高は3割弱の増加となったが、 若年層向けの施策で20~30代の顧客が増加した一方、客単価が低下したことから、今後の課題となっている。今期から3年間の中期計画では、サロン展開の改革にも着手。 具体的な内容は明らかではないが、都市型サロンにおいて、新規顧客との接点拡大を目的に、現状のサロンスタイルと美容機器を併用した販売戦略を担う店舗へ改革する方針だ。
 〝アフターコロナ〟では、完全にコロナ禍前の社会へ戻るわけではない。特に多様性が重視される現在、ニーズに対応できる柔軟さが求められる。