〝お墨付き〟問題再び、問われる法運用

    2月に破たんした太陽光事業者の一件が思わぬ余波を引き起こしている。販売預託取引と見られる方法で出資を募っていた同社が、国の支援や表彰を受けていたからだ。 同取引は改正預託法で原則禁止となったスキームで、認可を受けた例はない。これに〝お墨付き〟が与えられていたなら、「桜の会」との関係や天下りが取りざたされた 「ジャパンライフ」事件のようなスキャンダルに発展しかねない。
 問題の会社は山形県の「チェンジ・ザ・ワールド」。2月27日に破産手続き開始決定を受けた。約1万2000人に達する債権者の多くは、 太陽光発電に1㍗あたり約300円から出資できる「ワットストア」事業の出資者という。サイトでは、売電収入から年6~10%の売上金を受け取れると説明していた。
 しかし、昨年6月に施行された改正預託法の適用を受けることになり、「同法に基づき事業を継続することが不可能」(代表名義の告知より)と判断。破産申請に至った。
 この「ワットストア」は20年の段階で、東北経済産業局のスタートアップ支援事業の対象に選ばれ、環境省の「グッドライフアワード」賞を受賞。しかし、 21年3月に改正案が提出された預託法は、20年初めの時点ですでに消費者庁が販売預託取引規制の大幅強化を打ち出しており、夏には原則禁止の方向性でまとまっていた。
 支援や表彰の件は3月16日の参議院・消費者特別委員会で野党議員が追求。その後、河野太郎消費者相は同22日の定例会見で、 ほかにも表彰等を受けた販売預託取引事業者がいないか確認するよう求める注意喚起文書を各省庁に発出したと説明した。閣僚懇談会でも各大臣へ対応の指示を要請している。
 一方、法改正を議論した20年当時の有識者会議に事務局が提出した資料では、稼働中とみられる事業者の数を40社程度と推計し、取引対策課は 「正業と言えないような業者ばかり」「ほぼほぼ悪質と考えられる」と指摘。40社の具体例では、「エネルギー関連設備」を1つ単位で販売し、 太陽光発電所への設置で売電収入を得て、預託者に賃料を支払う――というスキームに触れられていた。少なくとも3年前の時点で消費者庁は 「ワットストア」の類似例を把握していたとみられる。
 改正預託法は21年6月に成立した。施行までの周知期間に規制対象になり得る事業者に消費者庁がどれほど法令遵守を働きかけていたのかも改めて問われるのではないか。
 取引対策課は22年度予算編成の際、改正預託法の執行全般を受け持つ「預託等取引対策室長」の配置を求め、最終的に却下されている。 新ポストの見送りが周知の徹底や監視体制に不備を生んでいた場合も、消費者行政のあり方が問われてくる。