細分化する需要への対応

    3年にわたって社会を大きく変えたコロナ禍も、制約を受けずに社会経済活動を展開できる時期が訪れようとしている。今春、 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが2類から5類へ移行することが決まり、〝アフターコロナ〟へ向けた動きが活発になるとみられる。 ダイレクトセリング化粧品分野は、コロナ禍の影響で化粧品需要が大きく落ち込んだことに加え、 2022年はロシアによるウクライナ侵攻等を背景とするコスト増によって、厳しい状況が続いてきた。 ユーザーの生活もあらゆる分野で値上げが続いていることから、「支出のどこを削るか」という意識が強まっている。ニーズを確実にキャッチするには、 これまで以上に柔軟に対応できる姿勢が求められている。
 コロナ禍の中、化粧品分野では、マスクで下半分が隠れた顔を演出する重要なアイテムとして需要が増加。また、在宅時間が増えたことに加え、 テレワーク時のオンライン会議などで自身の顔を見る機会も増えたことから、自宅でセルフケアを行う〝おうち美容〟のニーズも増えた。 このトレンドは〝アフターコロナ〟においても続くとみられ、ニーズ獲得のカギの1つとなっている。一例では、ナリス化粧品では、コロナ禍の中、 ITを活用した販売員支援や情報発信などを展開。販売員による訪問エステや〝おうち美容〟に対応したラインナップの開発も行ってきた。 1月日には、最高級スキンケアブランド「セルグレース」を全面的にリニューアルした。10年ぶりの大幅刷新であり、さまざまな独自成分・技術を導入し、 満を持しての投入となった。「相反するものの融合」というコンセプトをもち、現代社会において、多様化が進みながら、 それぞれの生き方を尊重する現代女性のあり方にもリンクしているという。コロナ禍の中で急速に多様化が進んだ女性の価値観や生き方、 働き方に寄り添った視点で開発されたと言える。
 最大手のポーラでは、最高峰ブランド「BA」を軸に、「おうち美容」需要の掘り起こしを図る。同時に、リアル施策へ回帰する動きもみられる。 2022年11月には、体験型店舗「POLA SQUARE FUTAKO」を東京・世田谷区にオープン。店舗では、 店舗内に置かれたさまざまな選択や体験をしていくことで、普段とは異なるスキンケアアイテムとの出会いを提供する。 店内ではポーラのスキンケア品・メーク品・ボディケア品などのセルフでのお試しや購入が可能。また、東京・銀座で竹中工務店との共同プロジェクトとして、 没入型アート体験イベントを開催するなど、コロナ禍前とは異なるアプローチでの施策が目立つ。付加価値の訴求は従来から行われてきたが、 より細分化されたニーズへの対応がポイントとなりそうだ。