連鎖の若者トラブル、徹底排除を

 連鎖販売取引における若者の消費者トラブルが改めてクローズアップされている。「マルチ取引」相談に占める若年層の割合の高さは変わらない中、 4月に成年年齢が引き下げられ、10月の「日本アムウェイ」処分を契機として若者を狙った〝ブラインド勧誘〟が注意喚起された。 来年に本格化する可能性がある特商法改正も見据え、トラブル排除の取り組みが求められる。
 昨年から今年にかけて特商法で業務停止命令等を受けた連鎖販売事業者は7社。前出のア社のほか「ライフコンシェルジュ」「ARK」 「ITEC INTERNATIONAL」「リーウェイジャパン」「NO―VA」「Sign」が対象となった。 約3カ月に一度のペースで処分が出されてきた計算となる。
 連鎖の手法を用いた事業者の摘発も盛んで、「アルケミスト」「OZプロジェクト」「ジュビリーエース」「ERA」などが事件化。株式投資指南、 仮想通貨、オンラインカジノといった商材で数十~数百億円の被害を生じ、金融商品取引法なども適用されてきた。
 そして、これらの処分や摘発のほとんどに共通するのが、相談当事者や被害者の多くを20歳代以下の若者が占めること。 直近のア社処分では相談当事者の45%を20歳代が占めたことが消費者庁から明らかにされている。所謂〝若者マルチ〟の問題は、 少なくとも20年以上前から消費者行政の中で重要課題の一つにあげられてきたが、今も変わっていない。
 一方で、PIO―NETにおける「マルチ取引」相談件数は減少傾向にある。21年度は前年度比14%減の8742件。過去20年で最少となり、 2000年度以降で初めて8000件台まで低下した。2000年度以降のピークは07年度の2万4332件だったため、 当時の36%まで縮小したことになる。
 また、商品・役務の上位には化粧品や健康食品といった業界の主力を確認できる一方で、そうではないアフィリエイト、 ドロップシッピングなどの内職・副業、ファンド型投資商品もいまだに多い。業界からも異端視されるこれら商材を除いた件数を比較すれば、 相談件数の観点からは市場の健全化は進んでいるとみなすことも可能だろう。
 しかし処分や摘発が収まる兆しは窺えない。その大きな理由の一つが「経験や判断力の十分でない若者が狙われている」 という手口の悪質さに起因していることは疑いない。ア社処分を契機とした注意喚起で指摘された通り、SNSやマッチング・メッセージアプリを介した 〝友人・知人未満〟の関係を入口とする強引な勧誘は忌避されてしょうがなく、古くて新しい〝若者マルチ〟の問題に拍車をかけている。 規制強化の口実とされることを避ける意味でも、各社が対策を急ぐ必要がある。