<なぜ進まない、「救済基金」の給付審査
1面で伝えた通り、「ジャパンライフ」事件の被害者から利用申請を受けている日本訪問販売協会の「訪問販売消費者救済基金」をめぐって、
給付の可否を見極める審査に遅れが生じている。17年12月にジャ社が実質破たんしてから5年が経過しようとする中、
期待された基金による被害者の金銭的救済が実現しないのはどうしてなのか。
基金の原案は、特定商取引法と割賦販売法の改正が議論された07年の経済産業省・特定商取引小委員会において、 委員の一人だった日本訪問販売協会が提唱する形で浮上。委員会では訪問販売の参入規制が検討されていたが、これが見送られるのと入れ替わるような形で、 協会の機能を強化するという理由から原案の具体化が進んだ。
その後、翌年の改正法で制度化され、09年12月にスタート。しかし、正会員に対して事業規模にかかわらず一律60万円の拠出金を求めたことや、 連鎖販売で結ばれた契約は原則救済の対象外とするルールなどが不満を呼び、運用開始の前後に正会員の〝大量退会〟が発生。波乱の船出となった後は、 利用の申し出を一度も受けることなく、約1億円の積立金は〝塩漬け〟状態を余儀なくされてきた。
そこに、正会員として加盟を続けてきたジャ社によるレンタルオーナー商法問題が発覚。15年にジャ社が退会した後、 16年~17年における計4度の行政処分と破たんを経て、初めて外部の注目を浴びることとなった。
ジャ社の破産手続きは現在も続いており、配当が行われる時期は未確定。また、実際に行われた場合も配当率は1%前後にとどまるとみられている。 このような状況下、2000億円を超えた甚大な消費者被害の一部でも救済できるのであれば、基金の本来の役目が果たされる。 制度と、これを運用する協会の存在意義を知らしめる機会にもなり得るはずだ。
しかし、今年2月、正式に受理した案件が「消費者救済に係る審査委員会」へ付託され、給付を行うかどうかの審査が始まったものの、 今夏を目途とした審査の終了には至っていない。このため10月の理事会での給付決議も見送られた。 審査が遅延している理由について協会事務局は契約内容の複雑さを話す一方、審査を終えた案件から理事会にかけるアイデアは否定。 全案件の審査を終える必要があるとの方針を示す。
協会が18年頭に初めて基金の利用申請を受けてから、すでに5年近くが経過。また、基金の利用申請を代行した大阪の被害対策弁護団が指摘する通り、 ジャ社事件の被害者の多くは高齢者が占める。一刻も早い救済の実現が求められる中、運用レベルで解消可能な〝阻害要因〟にこだわる理由はないはず。 15年前の委員会で原案を提唱した際の理念に立ち戻るべきだ。
基金の原案は、特定商取引法と割賦販売法の改正が議論された07年の経済産業省・特定商取引小委員会において、 委員の一人だった日本訪問販売協会が提唱する形で浮上。委員会では訪問販売の参入規制が検討されていたが、これが見送られるのと入れ替わるような形で、 協会の機能を強化するという理由から原案の具体化が進んだ。
その後、翌年の改正法で制度化され、09年12月にスタート。しかし、正会員に対して事業規模にかかわらず一律60万円の拠出金を求めたことや、 連鎖販売で結ばれた契約は原則救済の対象外とするルールなどが不満を呼び、運用開始の前後に正会員の〝大量退会〟が発生。波乱の船出となった後は、 利用の申し出を一度も受けることなく、約1億円の積立金は〝塩漬け〟状態を余儀なくされてきた。
そこに、正会員として加盟を続けてきたジャ社によるレンタルオーナー商法問題が発覚。15年にジャ社が退会した後、 16年~17年における計4度の行政処分と破たんを経て、初めて外部の注目を浴びることとなった。
ジャ社の破産手続きは現在も続いており、配当が行われる時期は未確定。また、実際に行われた場合も配当率は1%前後にとどまるとみられている。 このような状況下、2000億円を超えた甚大な消費者被害の一部でも救済できるのであれば、基金の本来の役目が果たされる。 制度と、これを運用する協会の存在意義を知らしめる機会にもなり得るはずだ。
しかし、今年2月、正式に受理した案件が「消費者救済に係る審査委員会」へ付託され、給付を行うかどうかの審査が始まったものの、 今夏を目途とした審査の終了には至っていない。このため10月の理事会での給付決議も見送られた。 審査が遅延している理由について協会事務局は契約内容の複雑さを話す一方、審査を終えた案件から理事会にかけるアイデアは否定。 全案件の審査を終える必要があるとの方針を示す。
協会が18年頭に初めて基金の利用申請を受けてから、すでに5年近くが経過。また、基金の利用申請を代行した大阪の被害対策弁護団が指摘する通り、 ジャ社事件の被害者の多くは高齢者が占める。一刻も早い救済の実現が求められる中、運用レベルで解消可能な〝阻害要因〟にこだわる理由はないはず。 15年前の委員会で原案を提唱した際の理念に立ち戻るべきだ。