現代型自宅ケアの提案

  ダイレクトセリング化粧品市場におけるサロン展開は、顧客接点と販売チャネルの多様化を目的に、「リアルでの対面」を基本としてきた。 1面で報じているように、コロナ禍の中、そのあり方が大きく変わったことでオンラインでのカウンセリングやITを活用した教育、自宅訪問など、 リアル・デジタルを駆使した施策が目立つ。
 これまで、リアルイベントとして、イベント会場や異業種とのコラボレーションによるブランド訴求、新規顧客獲得を行ってきた取組みは、 ニューノーマル社会になり、オンラインカウンセリングや専用アプリといった施策にシフトした。コロナ禍当初に比べ、 ニューノーマルに対応した社会体制が構築されたことで、現在ではリアルイベントも徐々に再開されるようになってきた。しかし、 コロナ禍前と変わらないスタイルで会員や販売員との接点を創出しているケースはごくわずかだ。組織の士気向上に大きく寄与する大規模な大会は、 リアルの会場とオンラインでの配信の同時進行で行われる場合もある。リアルイベントのメリットは、対面で会えることに尽きる。 このビジネスの原点である人と人のつながりは、まず対面から始まると言っても過言ではないだろう。

 一方で、オンラインでのイベント開催(リアルでの同時開催含む)は、さまざまな事情で会場に赴くことが難しい人でも、気軽に参加できる点にある。 このビジネスは、人と人のつながりによって広がる点を強みとしている一方で、接点が何らかの事情で途切れてしまうと、 たとえ商品を気に入っていても買うことが難しい状況になりがちだ。現在では公式ECを展開している企業も増え、 会員・販売員から直接商品を購入しなくてもリピートできる方法があるが、それでもすべてをカバーすることは難しい。商品は使いたいが、 人と関わらずに購入したい需要もあるはず。オンライン施策は、そのようなニーズにも柔軟に対応できるメリットがある。
 ニューノーマル社会の進展を背景に、DS化粧品分野でも、SNSの情報発信やEC強化を進め、情報動画の配信、 さらにはEC専用ブランドの展開などを導入する動きが強まっている。コロナ禍の早い段階からサロンでのオンラインカウンセリングを導入したポーラでは、 このほど「おうち美容」に関する動画を公式Youtubeで公開。将来的には、 サロンでのオンラインカウンセリングやワークショップでの活用も予定しているという。他社においても、コロナ禍で在宅時間が増えた結果、 需要が高まった「おうち美容」へのテコ入れが進む。
 自宅ケアを前提とした従来型訪販からサロンビジネスの流行を経て、現代のライフスタイルに合わせた付加価値型自宅ケアの提案が広がっている。