インボイスで憂慮、現場への打撃

 「インボイス制度」のもたら す影響がダイレクトセリング各 社に憂慮されている。訪問販売 の委託・契約販売員や連鎖販売 のディストリビューターには、 年間課税売上1000万円以下 の免税事業者が少なくないとこ ろ、これら販売員に課税事業者 (適格請求書発行事業者)への 登録とインボイス(適格請求書) の発行を求めても難色を示され ると容易に想像される。
 来年10月の制度開始後は、販 売員等に支払う手数料・報酬に 上乗せした消費税の仕入税額控 除を受けるため、適格請求書が 必要となる。適格請求書がなく とも開始後3年間は上乗せ消費 税の80%、その後の3年間は50 %の控除を受けられるものの、 控除できる金額が削られ、最終 的に全額控除不可となることに は変わりない。
 このため各社は制度開始後を にらんだ対応を模索している が、実態は手探りに近い。
 本紙が実施したアンケート調 査(1月13日号1面)で、イン ボイスを発行できる適格請求書 発行事業者への登録を販売員等 へ求めるかどうか聞いた結果、 消費税を上乗せして手数料等を 支払っていた39社のうち、方針 を「検討中」「未定」とした回 答が3分の2を占めた。制度開 始まで1年半以上を残している とはいえ、対応がそもそも難し いという事情のほうを色濃く窺 うことができる。
 大きな理由の一つは、適格請 求書発行事業者への登録に対す る反発が予想されること。販売 員等にとって、登録は新たに消 費税の納付を求められることを 意味するため、したがって利益 が目減りする。金額によっては 死活問題という場合もありえる だろう。
 また、会社側が登録を強制で きる かというと、それも難しい ケースを考えられる。アンケー トの回答社には、インボイスを 発行しない場合は取引を継続し ないという方針も見られたが、 取引の終了によって販売ボリュ ームが大きく落ちるようなこと になれば会社の収益に跳ね返っ てくる。
 有力な販売員等はすでに課税 事業者の条件を満たしているケ ースが多いと考えられる一方、 広い意味で現場を支えているの は免税事業者に該当する販売員 等達。その不満を和らげる方策 を怠るわけにはいかない。この ままインボイス制度がスタート すれば、商品・サービスや手数 料等の支払いの見直しを求めら れる会社も出てくるだろう。
 アンケートではインボイス開 始の賛否も聞いており、もっと も多かった回答は3分の2を占 めた「何ともいえない」だった が、賛否の明確だった残り3分 の1は「制度の開始に反対」が圧 倒的に多かった。記述式で聞い た国や行政に対する要望にも、 延期や低所得者に配慮する仕組 みを求める声が寄せられた。再 考の余地があるのではないか。