訪販協、「概要書面」スルーの手落ち

  改正特定商取引法の「書面電 子化」をめぐり、9月27日に消 費者庁で2回目のワーキングチ ーム(WT)が開かれた。ここ に、事業者団体として初めて、 日本訪問販売協会が出席。メー ルフォーム式の承諾取得などを 提案し、電子化のメリットと消 費者保護を両立可能な仕組みを 訴えた。一方、ある重要テーマ に関する意見はスルーされた。 概要書面の電子化の件だ。
 改正法で電磁的交付が可能と なる法定書面は、申込書面・契 約書面・概要書面の3つ。協会 はWTにおいて、申込および契 約書面については、訪問販売で 想定される電磁的交付のモデル ケースを図解入りで例示。様々 なアイデアの検討を求めたが、 概要書面については一切触れな かった。協会は、法案が国会に 提出された3月、電子化に関す る意見書をまとめて政府へ提出 しているが、この時も概要書面 の電子化については触れていな かった。
 協会事務局は、WTで概要書 面に言及しなかった理由につい て、申込・契約書面の電子化に おける考え方を「応用可能」だ からと本紙に説明した。しかし、 応用が可能というならば、WT のヒアリングでその旨も述べて おくべきだったはずだ。
 また、書面の趣旨や交付のタ イミング、交付を義務付けられ た連鎖販売や特定継続的役務の ビジネスモデル上の特性を踏ま えれば、そもそも同列に論じる ことは難しいはず。実際、WT の母体となる有識者検討会の初 回会合では、委員の一人から、 取引の複雑性などを理由に、申 込・契約書面と概要書面では承 諾の意味が異なってくるため 「具体的な政策を考えていく際 に分けて考えていただきたい」 との要望が出ている。
 こ の要望を受けてか、WTで は、契約書面以上に厳しいルー ルを求める声が優勢となってい る。1回目のWTでは、日本消 費生活アドバイザー・コンサル タント・相談員協会が、オンラ イン形式の塾等を除いて、概要 書面は電子化の対象から除き 「紙による交付を継続するべ き」と意見。2回目のWTでは、 全国消費生活相談員協会や日本 弁護士連合会から紙による承諾 を前提にするよう求められた。 概要書面の電子化をめぐる状況 は、契約書面以上に旗色が悪い と言わざるを得ない。
 協会は正会員ベースで4割が 連鎖販売を行っており、特定継 続的役務提供を手掛けるところ も2割に達する(19年度時点)。 さらに、理事27人のうち、約4 分の1にあたる7人の所属会社 は、連鎖販売が主事業。概要書 面の電子化に関する関心は高 く、要望も強いはずだ。協会の メインテーマが訪問販売の健全 化であることは言うまでもない が、連鎖販売業界に負う役目も 期待されている。今からでも、 概要書面の電子化に関する意見 を行うべきではないか。