地域密着の強み活かせ

 新型コロナウイルスの感染拡 大によって、2020年のダイ レクトセリング化粧品業界は多 大な影響を受けた。特に、サロ ンを中心とした事業や、海外展 開に注力してきた企業では苦戦 を強いられた。現在、各社はネ ット通販や〝おうち美容〟など、 コロナ禍によって変化したニー ズに合わせた商品・サービスの 開発し、ビジネスモデルの改革 を急いでいる。
 サロンビジネスの先駆け企業 として全国に100店舗以上の フェイシャリストサロンを展開 しているシーボンは、3月期決 算で売上高が前期比18%減の約 91億円と厳しい結果となった。 会員制のサロンにおいて、化粧 品販売とそれに付随するフェイ シャルサービスを軸としてきた 同社は、昨年の緊急事態宣言発 出時にサロン営業を全面休止せ ざるを得なかった。加えて、近 年新規会員獲得の入り口として 積極的に展開していた各イベン トへのブース出展や、異業種と のコラボレーションも軒並み中 止になってしまった。サロンビ ジネスは、従来型訪販に代わる 新たな対面販売のあり方として 定着してきたが、コロナ禍で非 接触が推奨されたことで、その 基盤が大きく揺らぐことになっ た。現在は感染防止対策を講じ ながらのサロン営業が一般的と なり、利用者側も必要以上に不 安がることもなくなったことか ら、シーボンに限らず、業界全 体でサロンビジネスの緩やかな 回復が期待されている。
 サロンビジネスを導入してい る企業であっても、業績への影 響は異なる。アイビー化粧品も 各地にサロン「アルテミス」を 展開しているが、3月期決算は 売上高が前期比1.8%減の約 37億円と、小幅な減収にとどま った。新商品の投入と、現場の 営業活動が主な要因だ。部門別 にみると、主力のスキンケアは、 対面カウンセリング販売が制限 された結果、売上は同27%減と 大幅なマイナスとなっている。 一方で、メークアップでは、新 ブランドを投入したことが奏功 し、同32%増、ヘアケアも昨年 6月に発売した新シリーズが寄 与して同73%増に。さらに、美 容補助商品部門では機能性表示 食品や電解水生成器といった新 商品の投入効果で同84%増と、 スキンケア部門の不調を他の部 門がカバーしたかたちだ。
 DS化粧品が展開するサロン では、店舗を構える一方で、地 域で活動する販売員が柔軟に動 いて顧客をフォローできるのが 強みだ。そのため、緊急事態宣 言等でサロンが営業できなくて も、商品を届けたり、さまざま なアプローチでフォローするこ とが可能だ。その時代の社会情 勢に合わせて柔軟にあり方を変 えてきたこのビジネスだからこ そ、コロナ禍という未曾有の事 態にも、比較的早い段階から対 応できたと言える。コロナ禍で 刻一刻と変化するニーズを汲み 取ることが不可欠だ。