デジタル施策に活路

  ダイレクトセリング業界の化 粧品分野では、コロナ禍の中で 新しい生活様式に対応した取組 みを実践してサロン営業を行っ ている。最近では、自粛疲れや 癒しを求めてサロンを訪れるケ ースもみられ、サロンでのコミ ュニケーションやケアが現代人 に必要とされていることを窺わ せる。首都圏では緊急事態宣言 が延長され、予断を許さない状 況にあるが、ビデオ会議ツール やスマホアプリなど、IT技術 を活用した施策によって、ニー ズに柔軟に対応している。
 最大手のポーラは、2021 年からの3カ年計画の中で、 「ダイレクトスリング」「スキ ンケア」「マルチブランド」を 3本柱として、新たな成長軌道 をめざす方針を打ち出した。目 玉は販売チャネルを横断したデ ジタルプラットフォームの構築 だ。2020年に社長に就いた 及川美紀氏は、ポーラのこれか らの戦略としてECへの注力を 就任当初から強調していた。直 近の2020年12月期の販売チ ャネル別売上構成比は、委託販 売が73.7%と大半を占める一 方で、ECは3.4%にとどま っている。だが、売上伸長率を いると、委託販売チャネルが前 期比26.8%減、ECが63.4 %と、ECの伸びが著しい。
 2000年代からサロンを主 軸としたビジネスモデルを構築 してきたポーラは、従来型訪販 からのシフトという点におい て、DS化粧品分野をけん引し てきた。拠点をベースとしたビ ジネスモデルは、訪販の「見える 化 」を実現し、販売員によるカウ ンセリング販売をより利用しや すいかたちに変えてきた。しか し、コロナ禍によって生活様式 が変化し、既存のビジネスモデ ルを踏襲することが困難になっ てしまった。これまで本紙でも 報じてきたように、コロナ禍の 中でもECやデジタルツールを 用いた施策は、ポーラをはじめ 各社で好調に推移してきた。ポ ーラでは、リアルでのカウンセ リング販売をベースとしつつ、 コロナ禍の中でも好調に推移し たECの売上を3倍(億円↓ 約100億円)、主力の委託販売 チャネルでは、スマホアプリや SNSによる情報発信といった ツールを積極的に活用すること で、利益率の高いロイヤル顧客 を育成していくとしている。具 体的には、顧客ネットワークを オ ンラインで拡張するほか、店 舗近隣の地元客を意識したショ ップアカウントからの発信、オ ンラインイベントなど、これま で実践してきた「地域密着型」 のビジネスをより現代の社会情 勢に合わせたかたちで展開して いくことを明らかにしている。
 また、デジタルツールの積極 的な活用は、デジタルネイティ ブと呼ばれる若い世代へのアプ ローチを強めるという側面もあ る。組織の新陳代謝という業界 共通の課題に対して、ポーラの 施策がどのように作用していく のか、動向が注目される。