油断招く〝外資系神話〟、排除を

  昨年11月、MLM中堅の「ア リックス・ジャパン」が特定商 取引法違反で9カ月の一部停止 命令を受けた。消費者庁の立入 検査は1月。関係者の間では夏 頃には「処分が出るのでは」と 噂だったという。ただ、噂だっ たのは処分の可能性だけではな い。本紙記者も複数の関係筋か ら耳にしたが、「外資系なので 処分は出ないかもしれない」と いう説がフィールドの一部で流 布していた。なぜ、そのような 期待が生じるのか。
 考えられる理由の一つは、国 内資本の事業者の処分件数と外 資系のそれの差だ。圧倒的に多 いのは国内資本の処分。件数だ けを見れば、外資系は処分され ないと考えてしまうことも分か らなくはない。
 MLMに絞ってみれば、外資 系の処分は08年2月のニューウ エイズまでさかのぼる。この処 分を当時の本紙は「MLM業界 に激震」の見出しで伝えた。処 分を耳にした競合他社の一部 は、緊急会議を開いて自社の対 策を練ったほど。それほど業界 にとっても非常に大きな問題と 受け止められたが、13年が経過 する中、業界でも衝撃が薄れて いるとも考えられる。
 また、海外を拠点としたWE B系のビジネスだったりする場 合、証拠をつかみづらいことな どから、国内法の適用が追い付 かない限界がある。米国をはじ めとする海外の業界団体が日本 に比べてはるかにロビー活動に 熱心なことも、〝外資系神話〟 とでもいうべき期待の背景に指 摘できそうだ。
 しかし、件数としては少なく とも、外資系事業者が見逃され ていると考えるべきではない。  例えば、消費者庁は約1年前 の19年12月、米ニューヨーク州 に本社をもつパルムコ・エナジ ーの日本法人だった電気小売り 事業 者「ファミリーエナジー」 に業務停止を命じている。米国 在住だったファ社代表社員「ロ バート・パルミーシ」に禁止命 令も出した。ファ社で働いてい たスタッフは同氏の「手足だっ た」(取引対策課)といい、指 揮系統は海外に置かれていたが 処分に至った。
 ア社の場合は、立入検査を受 ける前に同庁や関東の複数の自 治体から特商法に基づく行政指 導を受けていた。過去に同様の 指導を受けた外資系は、噂レベ ルから確度の高い情報まで少な くない数を聞く。決して見過ご されているわけではない。
 根拠に欠けた〝外資系神話〟 のような勘違いがフィールドに 蔓延るようならどうなるか。 「これくらいだったらいいだろ う」という油断を会員の間に広 げ、トラブルの芽を枝葉に育て かねない。コンプライアンス意 識の高まりを妨げ、そのことに 嫌気をさしたグループの離反を 招く可能性も捨てきれない。も しも、甘い期待を口にするよう なことを見聞きしたなら、打ち 消しておくべきだろう。