〝訪販・連鎖悪玉論〟は目くらまし

本紙既報(1月16日号3面)のと おり、磁器治療器レンタルオーナー 商法の「ジャパンライフ」に代表さ れる「販売預託商法」の法規制に消 費者庁が乗り出し、今年度内に有識 者検討会議を立ち上げる。昨年8月 に消費者委員会が法規制を提言した 際は消極的姿勢を貫いていた同庁だ が、一連の「桜を見る会」問題にお いてジャ社元会長への招待状が勧誘 に利用されたこと、年時点で予定 していた立入検査が政府への〝忖度〟 の末に見送られていた 疑惑が浮上し たことなどを受け、方針転換した。 ここで預託法とともに見直しのター ゲットになりそうなのが特定商取引 法。同庁は消費者委の提言に対し、 無理筋の〝訪販・連鎖悪玉論〟を持 ち出して反論した経緯があるだけ に、過剰規制に踏み込まないか注視 が必要だ。  昨年11月以降、「桜―」問題を契 機に一層、報道されるようになった ジャ社の手口と被害。そこで気にな ったのが、ジャ社を〝悪徳マルチ〟 と報じるメ ディアの多さ。被害の拡 大に連鎖販売取引の手法が一役買っ たのは確かで、特商法で業務停止も 命じられたが、その本質は、出来も しない元本保証を謳って自転車操業 の実情や磁器治療器の在庫不足を隠 した販売預託のスキームにこそあっ た。  このような論点のズレは、昨年8 月、販売預託商法の法規制を訴える 消費者委が消費者庁に行ったヒアリ ングでも見られた。
 ヒアリングで同庁の取引対策課長 は、同商法による被害の根幹は「消 費者に虚偽の説明とか勧誘等によっ てなされる 訪問販売とか連鎖販売の 取引の形態を通じているというとこ ろ」と説明。販売した商品等を預託 させるスキームは「いってみれば悪 徳事業者の目くらましの手口」と続 け、訪販や連鎖販売に被害拡大の主 因を求める転倒した主張を繰り広げ ていた。
 しかし、その後の「桜―」問題な どを受け、国会で消費者相が法規制 の考えを明言。この国会では野党議 員から、法規制を頑なに拒んできた 理由を「法改正を必要だと言ってし まうと法律が不備だったということ になり、安愚楽牧場のように(ジャ 社問題でも)国家賠償訴訟が起こさ れる」「消費者庁の保身ですよね」 と追及され、同庁審議官が、消費者 委 での説明は「あくまでもその当時 の考え」と苦しい答弁を余儀なくさ れる場面も見られた。
 販売預託商法の法規制に及び腰な 本来の理由である、保身や〝忖度〟 といった背景が明るみに出ないよう に、目くらましのために訪販や連鎖 販売をスケープゴートにする〝悪玉 論〟を持ち出した のだとすれば、 ダイレクトセリング業界にとって到 底許されるものではなく、今後の有 識者会議で特商法の見直しに過剰に 踏み込まないか警戒してしかるべき だろう。
 昨年8月末に出された消費者委の 建議および意見は、訪販および連鎖 販売の規制に関連した特商法の見直 しを直接求めていない。2月中に行 われると見られる、建議に対する同 庁の報告で特商法の見直しにどのよ うに触れられるかが、今後の行方を 占うポイントとなってくる。