消費者庁、自浄できぬなら解体を

 巨額の負債を抱え破たんしたレンタルオーナー商法の「ジャパンライフ」の問題をめぐり、ジャ社を4度に渡って処分した消費者庁が、政権への〝忖度〟で立入検査のタイミングを遅らせていた 疑いが浮上、消費者行政の司令塔としての存在意義を問われている。にもかかわらず、消費者大臣や同庁長官、同庁を外局とする内閣府のいずれも、疑惑への説明を実質的に拒む対応に終始。 自浄作用を働かせられないなら、同庁の解体もやむなしではないか。
 立入時期に関する疑惑は、11月28日の参院地方創生・消費者問題特別委員会で浮上。14年7月に経済産業省から出向した取引対策課課長の下で、当時検討されていた立入が行政指導にとどめられていた。 課長が着任した直後の会議で配布された内部資料には、「本件の特異性」「政治的背景による余波を懸念」「この問題は政務三役へ上げる必要」と記載。 ジャ社に天下っていた複数の省庁OBの件を念頭に置いたと見られる。
 その後、複数のメディアの報道で、資料は、ジャ社に天下った同課課長補佐が自ら作成したことを認めたとされる。が、消費者大臣や長官は、国会の質疑や定例会見でこの件に関するコメント自体を 拒否する返答を連発。国会の野党ヒアリングに出席した内閣府職員も、のらりくらりでまともに答えていない。
 しかし、次の課長の下で立入が行われる15年9月までの約1年2カ月の間に何が起きたか。ジャ社の行政指導も担当した前述の課長補佐の天下りを許した上、ジャ社会長に送られた政府の 「桜を見る会」招待状がオーナー商法の信用固めに利用さえされた。ジャ社と行政との癒着が深められ、被害の拡大が放置されたわけだ。 そもそも、当該の資料は17年の衆院消費者問題に関する特別委員会で、国のほうから開示された資料としてオープンに質疑されていた。そのことを無視してとぼけるような応対は理解に苦しむ。
 また、ジャ社をめぐっては、〝忖度〟疑惑が浮上する以前より、同庁の不可解な対応が疑問をもたれてきた。一つが、15年9月の立入から16年12月の1度目の処分まで1年3カ月もかけた、 異例の手続きの遅れ。やっと行われた1度目の処分も、勧誘目的等不明示のみを理由とした3カ月の業務停止という腰砕け。17年3月の2度目の処分でやっと、一部製品の在庫不足認定に至った。  同庁は当時、これらの疑問にも正面からのコメントを避けてきた。が、もっと早くに予定されていた立入が行政指導に転換された疑惑が浮上したことで、 1度目の処分までの期間と中身の不可解さも改めて注目を浴びている。不作為に不作為を重ねた疑いが濃くなっている以上、回答拒否が許されるわけもない。
 12月18日に行われたジャ社の第3回債権者集会の後、声明を出した被害弁護団の連絡会は、ジャ社側から献金等を受け取っていた政治家は返還すべきと求めるとともに、 「桜を見る会」招待問題での首相による経緯説明などを求めた。 一連の経緯を説明すべきなのは消費者庁も同じ。自ら正せないなら第三者委員会を設けるなり、消費者委員会による調査を行うなり、外部の手も必要だ。