訪販協 問題相談の再発防止に本腰入れよ

日本訪問販売協会は、正会員に係る「問題性あり」相談の再発防止に本腰を入れて取組むべきである。本紙の取材によれば、2019年度上半期(4~9月)に同協会に寄せられた 「問題性あり」相談は26件と前年同期比10.3%減となった。商品別では「健康食品」が8件と前年同期比38.55%減となったのが大きく影響した。ところが「教材(含指導付、以下同じ)」は11件と 前年同期比2・8倍に急増、全商品の中で最多となった。「教材」は2014年度、2015年度も「問題性あり」相談のトップ商材であった。
 将に、この当時の状況に逆戻りしたことになる。同協会が公表した2018年度「訪問販売ホットライン受付概要」では、正会員に係る「問題性あり」相談の全てが「事業者の迅速な対応と 同相談室の仲介で、大事に至ることなく早々に解決に至った」などとしていた。そこには「教材」が8件含まれていた。
 そこで問われるのは、2019年度上半期の教材に係る「問題性あり」相談8件に、2018年度の「問題性あり」相談8件を引起した会員企業が含まれているのか、いないのかということだ。 「含まれている」とすれば、「解決に至った」というのは、「たまたま表面化したから解決した」だけのことではなかったのか。 そうであれば、当該相談を惹起させた会員企業のコンプライアンス体質は、旧態依然で殆ど改善がなされていないことを意味するものであろう。
 これでは、毎年同じ会員企業から同じような「問題性あり」相談が寄せられていることが少なくないということである。 それは、同協会の消費者相談室が毎年もぐら叩きを繰り返しているようなものであり、非生産的な業務を行っていると見られるものであろう。 特商法が、訪販協に会員企業に係る苦情相談の受付とその処理を義務づけ、且つ、その結果を会員へ周知することを義務づけている。これは、「同じような苦情が生じないように」するためとされる。 現状は、この法的要請にも応えているとは言えまい。
 又、別の視点から見れば、会員企業に係る全相談件数の5割近くが「問題性あり」相談であり、非会員のそれよりも高い状態が続いていることは、訪販協の求心力を弱めるだけでなく、 ダイレクトセリング(訪販と連鎖販売取引)業界全体の評価にも結びついていく。そしてこのことが、特定の業種・商材によってもたらされることは、他の業種・業態の会員企業にとっては 耐え難い事態であり、協会運営の在り方に疑念を生じさせるものであろう。
 このような状況から脱却するためには、教材業界をはじめとする「問題性あり」相談を繰り返す会員企業に対して、表面化した「問題性あり」相談の処理に止まらず、 根底にあるビジネスモデルにまで踏み込んだ改善指導が行われるべきだ。特に「教材」に目立つ「過量」と見られる販売については、自主行動基準で規定する「過量に当たらない目安を超える」 場合の「その契約を必要とする当該顧客の特別な事情の確認」が行われているのか否かが大きなポイントになる筈だ。自主規制の遵守状況の確認も重要になる。