訪販協「問題性あり」相談急増は要警戒

日本訪問販売協会の正会員に係る「問題性あり」相談が急増している。同協会がこのほど公表した2018年度「訪問販売ホットライン受付概要」によると、正会員に係る相談件数が152件と 前年度比52.0%の大幅増となった。この内、「特商法」と同協会の「自主行動基準」に抵触する恐れのある「問題性あり」相談は75件と前年度比97.4%増と倍増。 正会員の相談件数のほぼ半数を占めた。一方、非会員に係る相談件数は229件と同16.1%減、この内、「問題性あり」相談は53件で、その割合は23.1%に止まった。
 このような事態は、消費者行政において、事業者・事業者団体との連携の必用性が指摘される中で、ダイレクトセリング(DS、訪販と連鎖販売取引)業界は、 その対象になることが極めて困難であること窺わせるものであろう。
 ところが、同受付概要は、正会員に係る「問題性あり」相談の急増等は、「問題性の判断を取り分け厳しく行い」、「丁寧な聞き取りと慎重な情報収集」を行った結果であるなどとしている。 このような指摘は、正会員に係わる相談を非会員に係わる相談と区別(差別)していると受け取られ、誤解を生むものであろう。その一方で、正会員に係わる「問題性あり」相談の内容は、 同受付概要では開示していない。正会員に係るその内容は、会員限定で交付される「消費者相談室レポート」に掲載されている。
 それによるとこれら「問題性あり」相談を惹起させているのは、特定の業種・業態に偏っていることが分かる。2018年度は、最も多いのが「健康食品」で37件、2017年度の19件から 大幅に増えている。これに次ぐのが「洗剤等」であり11件。前年度には見られなかったものだ。3位が「教材(含指導付)」で8件、これも前年度の6件から2件増えている。 これら件数を評価する場合は、それぞれの市場規模との関係も考慮されなければならない。それでもDS市場で最大規模を誇る「化粧品」に係わる「問題性あり」相談は、2017年度は僅か1件、 2018年度も5件に止まる。これに対して、化粧品に次ぐ市場規模を持つ「健康食品」は2016年度から件数の多さと増加ぶりが目立つようになっている。 又、「教材」は2014年度に15件と商品別で最も多かったが、以後、減少に転じ、2018年度に再び増加に転じた。
 特商法は訪販協に「当該苦情に係る事情及びその解決の結果について会員に周知させなければならない」(29条4項)と規定。その趣旨を「同じような苦情を生じないように訪販協に、 会報・研修会等を通じて会員に周知させる義務を課した」としている(消費者庁・経産省編の同法の解説書)。しかし、「消費者相談室レポート」からは、右に示した特定の業種・業態で同じような 「問題性あり」相談が毎年繰り返し引き起こされていることが窺われる。かつては連続して、同一企業ないしは同一企業グループによって引き起こされていると見られる事例もあった。 これらは訪販協の対応が、未だ法の趣旨に沿った実効性を確保していないことを示すものであろう。