救済基金の利用、特例で阻むな

 日本訪問販売協会の元会員で、レンタルオーナー商法により甚大な消費者被害を生んだ「ジャパンライフ」(破産手続き中)。その被害者から「訪問販売消費者救済基金」(以下救済基金)の 利用申請を受けている協会が10月18日、ジャ社破たん後で初めて、一連の申請に関する公式な告知を行った(11月7日号2面既報)。しかしその中身は、被害者の利用申請を来年1月20日で締め切り、 救済基金で肩代わり弁済が認められても支払いは破産配当の有無等が決まった後になるというものだった。
 告知から受付締切までの期間は約3カ月。協会事務局は、被害額の大きなケースは何度もジャ社と契約を結んだりしているため「ずぶの素人ではないはず」と想定。 同じ被害者や弁護団との情報共有もあるはずとして、期間は短くない旨を述べる。
が、そもそもの告知のタイミングは適切と言えるのか。ジャ社の経営破たんが明らかになったのは17年12月下旬。 被害者による救済基金の利用申請は18年1月頃から始まり、2月には破産申請、3月に手続き開始が決定した。
 さらに、1~3月は協会の消費者相談室で、ほとんどがジャ社関連となる「健康器具」の相談件を受け付け。月に開かれた1回目の債権者集会では管財人から、 被害者への配当が困難な見通しが示された。
 つまり、破たんした17年12月以降、利用申請や相談が寄せられ、配当困難の見通しを受けて救済基金の意義が高まっていることを認識しながら、2年近くも対外的な告知をしていなかったことになる。
 救済基金の申請は、特商法の解除権行使から1年以内が条件。もっと早くに告知していれば、条件をクリアして申請できた被害者がさらにいたのではないか。 民法の〝5年時効〟に阻まれたケースも考えられる。
 被害者への給付額を破産配当の有無あるいは配当額が決まった後にするとの告知も問題が指摘される。
 協会事務局の説明は、給付額は契約者の支払った額が基準のため、仮に配当があった場合、配当金額を給付額から除外する必要があるというもの。ただ、そのような相殺が必要としても、 先に肩代わり弁済を行った後、配当が出ると決まった時に管財人から直接、協会に相殺分の支払いを受ける方法もある。
 今年6月の第2回債権者集会で管財人は、破産手続き終了まで「あと最低でも1年~1年半」と説明した。多くが高齢者の被害者にすれば、申請が通っても実際の給付でペンディングされては 納得が行かないだろう。
 さらに、締切の設定と配当有無等の決定後の支払いは、救済基金の運用ルールを定めた「業務実施方法書」に根拠となる規定は存在せず、協会事務局は「特例」と説明する。 弁済の可否等を判断する「消費者救済に係る審査委員会」には事前の了承を取ったという。しかし、被害救済の観点から言って後退したとしか見えない措置が許されるなら、 救済基金の意義が蔑ろにされたに等しい。ジャ社破たんに端を発する利用申請が協会にとって〝異例〟なことは理解するが、だからこそ正規の手続きを粛々と取るべきではないか。