連鎖販売 過剰在庫問題に本格的取組を

連鎖販売取引を統括する多くの企業の製品がWeb上で販売されている。このような販売方法は、店頭販売などと同様に、統括企業によって禁止されているものだ。 このことは勧誘・販売の担い手である会員(勧誘者及び一般連鎖販売業者)には周知されている筈だ(多くの場合会員規約等に明記されている)。
 それにもかかわらず、Web上で販売されているのは、会員が昇格を目指し、あるいは資格を維持するために統括企業から仕入れた商品を自ら捌けずに過剰在庫となり、 ディスカウント・ショップ(DS。いわゆるリサイクル・ショップ、古物商)に横流しされ、そこから販売されているからだ。しかも、その殆どの場合、販売価格は会員の仕入れ価格を下回っている。
 統括企業の多くは、自主ルールで過剰在庫を禁止すると共に、過剰在庫を抱えてしまった場合に備えて、返品ルールも運用している。 統括企業がここまで対応しているにもかかわらずDSに流出するのは、これら組織内ルールを利用すると、返品に係る仕入れ実績が清算され目的が達せられなくなるからだ。
 会員はこれを回避するために密かにDSに横流しする。無論、統括企業はこれらルール違反には厳しく対応しており、処分の実態を開示しているところもある。 しかし、監視が行き届かないことに加えて、会員による買込みが統括企業の売上増に繋がるという利益相反があり、厳格に取り締り得ない側面が出てくる。
 とはいえ、現状を放置することは、先行きこのビジネスに回復困難な事態をもたらす恐れがある。
 先ず、組織の価格体系を破壊し、真っ当な会員からビジネス・チャンスを奪っていく。これはビジネスとしての魅力そのものの喪失に繋がる。 又、外部からは、次のような評価や疑問を受ける恐れがある。①連鎖販売取引には、過剰在庫を生む必然的要素があるのではないか。②過剰在庫を禁止し、返品ルールまで設けて組織を運営しながら、 それらのルールに実効性を持たせることができないのは、ビジネスとして未完成なのではないのか。③現状の下で会員は利益を得ているのか。このような評価や疑問は、 ようやく是正されてきた行政の見方、つまり「連鎖販売業は、物品販売等の『事業』であり、組織外への販売等の事業活動による利益が十分得られるようなものであれば、 必ずしも破綻するとは限らない」に水を差すものであろう。
 従って、現状からの脱却は急務であり、統括企業は取り得る施策を総動員して過剰在庫の排除に取組む必要がある。先ず、個々の統括企業は、自らの組織内での過剰在庫の発生状況と影響を把握し、 その発生原因を根本から解明する必要がある。報酬や資格制度の基本であるマーケティング・プランに起因するのか。それともフィールドの特定のグループによる仕業なのか等々を明らかにし、 原因に応じた対策を講じるべきだ。又、日本訪問販売協会は、統括企業会員からこれらの情報をできる限り収集し、分析を行い、 各社に共通する要因等については専門調査会を設けるなどして本格的に取組む必要がある。