消費者庁は「天下り」問題と向き合え

8月30日の建議で消費者委員会から求められた、「販売預託商法(レンタルオーナー商法)」の規制について消費者庁が消極的姿勢を崩していない。 規制を検討するかどうか、9月4日の会見で訊ねられた同庁長官は「法制度の在り方、それから体制強化を含む法執行について、 これから考えていきたい」と検討の余地があるように匂わせつつ、「具体的なスケジュールは、まだ決めておりません」ともコメント。 このまま建議が棚上げとなる可能性も低くなさそうだ。
 「ジャパンライフ」「ケフィア事業振興会」「安愚楽牧場」「近未来通信」等々、長年にわたって数百~数千億円規模の被害を生む類似商法が次々に登場してきた。
 ジャ社や「WILL」の件で特定商取引法の執行が「モグラたたき」の域を出ないことが実証され、ケフィアや近未来などは通販形式で出資を募っていた以上、 同庁が消費者委のヒアリングで主張した〝訪販・連鎖悪玉論〟が意味をなさないことは明白。「販売預託商法」を規制すると周辺の新ビジネスの芽を摘むといった 主張も、消費者委による業界団体ヒアリングで当の業界が規制を拒まない旨を回答しており、説得力に欠ける。
 規制の一環としての参入規制には、いわゆる〝行政コストリスク〟や〝お墨付きリスク〟を持ち出して反論したが、 これも対象と見込まれる業者の数などでずいぶん変わってくる話と言える。
 ここまで社会的な注目を集め、ジャ社の事件では捜査当局も動く「販売預託商法」の規制に消費者庁が及び腰な理由はどこにあるのか。 この点を突き詰めていくと、上げざるを得ないのが「天下り」の件だ。
 ジャ社に対する1度目の処分の後、特商法と預託法を所管する取引対策課から、同社の行政指導を担当していた課長補佐が同社に天下っていた事実が発覚。 罰則のない勧誘目的不明示のみで3カ月の業務停止を命じるという、不自然とも言える1度目の処分後、天下り発覚を経て出された2度目の処分は、 磁気ネックレスの在庫の大幅な不足という事件の核心に触れる認定を行った。天下りの発覚がなければ2度目の処分があったかは不確かで、 ターニングポイントになったことは間違いない。
 一方でその後、「天下り」の当事者と関係者の処分は行われず、内部の新職員研修で再就職制度を説明したり、再就職の自粛を罰則なしの内規に盛り込んだだけ。 内輪のルールでお茶を濁し、問題の沈静化を待つ手段が選ばれた。
 しかし、「販売預託商法」の規制に乗り出すことになれば、「モグラたたき」の域を出ていない特商法の限界を洗い出すにあたって、 初動の手ぬるさの原因になったとも考えられる「天下り」の件が蒸し返されることになりかねない。これを嫌って、規制に消極的な姿勢を取り続けているのではないか。 「天下り」の問題に向き合わず、公正な始末をつけることを放棄した身勝手さが、今後も「販売預託商法」を横行させることになるのだとしたら、 消費者庁にその名前を名乗る資格はもはやないのではないか。