社説 消費者委 ジャパンライフ事件を検証すべき

消費者委員会は、ジャパンライフの預託商法(販売方法は訪販、連鎖販売取引、業務提供誘因販売)による巨額の消費者被害 (以下「ジャパンライフ事件」)に対する消費者庁の対応を厳正に検証し対応策を明らかにすべきだ。預託商法による消費者被害は、 金の現物まがい商法の豊田商事事件以来、繰り返し発生しており、ジャパンライフ事件は、被害者が高齢者を中心に約7000人、 一人当たり被害額は約3000万円とされる深刻なものだ。
ジャパンライフ事件については、預託法との関連などから、新たな法規制の在り方なども提案されている。 しかし、消費者行政の監視役を自認する消費者委のやるべきことは、ジャパンライフ事件に対する消費者庁の法執行が、 適正・厳正に行われたのか否かを検証することから始めるべきであり、新たな法規制の在り方の検討は、この検証を踏まえた上で取り組むべきである。
ジャパンライフ事件に対する消費者庁の対応(法執行の手法)には多くの疑問点が残る。
先ず、消費者庁は同社に対して4回もの業務停止命令を発令した。これは少なくとも3回目までの業務定期命令が機能しなかったことを意味する。 何故、機能しなかったのか。業務停止命令の内容がピント外れだったのか、あるいはジャパンライフが業務停止命令に違反して営業を継続したのか。 何れかが考えられる。特商法の場合、業務停止命令違反には「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科あり)」が科せられるが、 この規定は適用されていない。
又、業務停止命令の発動に際しては、並行して指示処分も行われたが、その内容は4回ともほぼ同じで通り一遍のものだった。つまり、 (1)業務停止命令の原因となった違法行為の発生原因について調査分析・検証を行い処分発令日の1ヶ月後までに文書で報告すること、 (2)再発防止策とコンプライアンス体制について、業務再開1ヶ月前までに文書で報告すること、というものだ。 同じ内容の指示が繰り返し行われたということは、当該指示の前の指示が殆ど履行されていなかったと考えるのが自然であろう。 特商法の場合、指示違反には「6月以下の懲役又は100万円以下の罰金(併科あり)」が科されるが、この規定が適用された形跡もない。 消費者庁の指示事項に対して、ジャパンライフがその都度、どのような内容を報告し、且つ、その報告をどのように評価し、 対応したのかについても検証すべきである。
消費者庁のジャパンライフへの法執行における最初の躓きは、2016年12月16日に発令した第1回目の業務停止命令の内容である。 業務停止の期間は3ヶ月と軽くし、連鎖販売取引で預託商法を行っていた上位会員の処分を見送ったことだ。この初動の甘さが、 消費者庁の弱腰姿勢を見透かされ、違法行為を継続させる原因になったと考えられる。そして、2回目の業務停止期間が9ヶ月、 3~4回目が12ヶ月。消費者庁は3回目にしてようやく前2回までの処分の甘さに気づいたと見られる。この失態はどこに起因するのか。 消費者委はここにも検証のメスを加える必要がある。