社説 DS化粧品 女性の共感得る施策こそ

このところ、ダイレクトセリング化粧品各社、特に老舗企業で、企業理念や経営方針の再確認や定義が活発に行われている。 創業から数十年を経て、女性を取り巻く社会情勢や価値観そのものが大きく変化してきた。時代も平成から令和に移り、 老舗としての矜持を受け継ぎつつ、新しい時代、現代女性の琴線に触れる組織体としてのあり方を模索しているようだ。 最大手のポーラは、サロン展開をはじめ業界のトレンドの発端となってきた。同社は近年、「共創」という価値観を軸とした戦略を展開し、 社内改革や製品開発等、さまざまな場面でそのコンセプトに基づいた取り組みを行っている。「共創」とは、「互いを高めあう関係」を意味している。 同社は、最高峰ブランド「B.A」をはじめとする各ブランドにおいて、美容に高い関心をもち購買意欲も高い コアユーザーをメーンターゲットとしてきた。7月8日に大幅リニューアルを果たす個肌対応化粧品「アペックス」は、カウンセリングや各種測定、 さらにはAIとビッグデータを活用した分析によって、実に862万通りのアイテムを提案することが可能となる。 アプリで自分の肌状態の変化を容易に把握することも可能で、ここでもユーザーとビューティーディレクターが「共に創る」過程に重きを 置いていることが分かる。「共感」というキーワードは、現代生活において重要な意味をもつ。SNSの活用がこれだけ拡大したのは、 他人の生活をのぞき見たいという好奇心だけでなく、「共感」を求めるからであろう。このことからも、ポーラが提示した「共創」という価値観は、 現代人のニーズにも合致する点が多い。
同様のコンセプトを新工場の建設に取り入れたのはナリス化粧品だ。同社は「人様のために~for others~」を経営理念に、 販売方法や製品、社会貢献活動を通じて理念の体現を行っている。5月に稼働開始した兵庫県三木市の新工場は、 従来から掲げてきた「人を大切にする工場」をさらに進化させ、「みんなで作り上げていく工場」をキーワードに、安全性や快適性を追求した。 働き方改革や女性の活躍推進にも積極的な取り組みを行ってきた同社は、新工場において従業員が働きやすいラインを設計したほか、 リフレッシュできるスペースの設置、外国人従業員にも分かりやすいユニバーサルデザインの採用等、 さまざまな部分で「共に作り上げていく」コンセプトを盛り込んだ。また、工場ではスキンケアやメークレッスンといった勉強会や、 社員の子どもを対象とした工場見学会も実施しており、従業員だけでなく、その周囲の人々と「共に作る活動」を行っている。
同社はまた、「より広く多くの女性」に化粧品やエステ等を使ってもらうことをモットーとしている。代表例は、 手軽に来店できるセルフエステやクイックサービス、短時間での「ふきとり」をはじめとした独自の美容理論を実践できる美顔器 「メガビューティ」等だ。これらは幅広い年代・価値観の女性が共感しやすい製品・サービスであり、 現代女性のニーズを踏まえたブランディングと言えるだろう。