社説 訪販協は事業計画に数値目標を

日本訪問販売協会のコンプライアンスの向上に向けた事業に、数値目標を導入することを求めたい。 訪販協の現状に照らして、事業への取組にメリハリを持たせ、緊張感をもって対応することが必要になっているからだ。 訪販協は継続事業として、毎年、訪問販売適正化事業を掲げ、訪問販売員教育指導者資格制度とJDSA教育登録制度をその中核に据えている。
しかし、これらの結果はどうなのかと言えば、実効性を確保しているとは言い難い。それは、本欄で折に触れて指摘してきたように、 訪販協の消費者相談室に寄せられる正会員に係る相談のうち、「問題性あり」相談の割合が、 非会員のそれよりも高い状態がここ4~5年に亘って続いているからだ。これは訪販協が自主規制団体として、 求心力が高まらない要因にもなっていると考えられるものだ。訪販協は、消費者相談室に寄せられた全相談については、 毎年集計・分析して公表している。しかし、正会員に係る相談に焦点を当てた分析は、全体の件数とその内訳、 個々の「問題性あり」相談の処理概要のみである。正会員の「問題性あり」相談の割合が、非会員のそれよりも高い原因までは分析するに至っていない。
同消費者相談室に寄せられる全相談件数はかつて年間6000件台にも達していたが、昨今は400件を割る状態。 このため少ない件数の中で趨勢を判断できないとしていることも予想されるが、件数は少ないながらも傾向は明らか。 真正面から分析し原因を明らかにし、是正に向けた取組を進めていくべきなのだ。
因みに、正会員に係る「問題性あり」相談を商材別に見ると、その変遷が大きい。かつては寝具と教材が2大商材だった。
その後、寝具は信販の与信審査が厳しくなる中で大幅に減少。その中で教材は、2014年度、2015年度に圧倒的多数を占めた。 2016年度になると健康食品が最も多くなり、この趨勢は2017年度も続き、2018年度も第3四半期まで同じ傾向が続いている。 教材は訪販による過量販売の疑いのあるものが目立ち、健康食品は連鎖販売取引によるものが目立つ。 2018年度の連鎖販売取引に係る「問題性あり」相談は、20歳代から80歳代まで年齢に関係なく発生している。 行政等の連鎖販売取引に対する視線が厳しさを増す中で、見過ごせない事態が足元で起きている。
これらの事態を踏まえて、事業計画に盛込むべき数値目標として先ず求められるのは、これら正会員に係る「問題性あり」相談の件数、 ないしは相談全体に占める割合を、2年後、3年後までに何処まで引下げるかを設定することであろう。 当面の目標は、非会員の「問題性あり」相談の割合以下でなければ、公益社団法人として格好がつくまい。
この目標を達成するためには、当該会員企業への是正指導において、これまでとは異なる踏み込んだ対応が求められる筈だ。 ビジネスモデルの妥当性を始め、訪販協策定の自主行動基準の運用状況、「問題性あり」相談の発生履歴と訪販協による指導履歴をチェックするなど、 再発を認めない姿勢での指導が求められる。