揺れる米MLMマーケット

誇大報酬説明、FTCが新ルールで規制へ
4カ条の「不実告知」、「罰金」「返金」再び可能に
「経費差引き後収益」開示、参加前「冷却期間」も



 米MLM業界に対して圧力≠強めていた米FTC(連邦取引委員会)が、不公正・欺瞞的な行為・慣行を包括的に禁止したFTC法を補完するため、新ルールの制定に乗り出した。ターゲットはMLMの報酬説明。実際より誇大だったり、合理的根拠を有さない説明を明確に禁じるとともに、違反が疑われる企業は提訴して罰金を支払わせる。さらに、経費を差し引いた後の収益の開示義務、登録前の冷却期間≠窿Nーリング・オフなども提案している。一方、政権の移行期間中であることを理由に、5人いるFTCコミッショナーの一部は反対。今後、棚上げ状態となる可能性もある。
 

MLM報酬に特化

   米FTCは1月13日、いわゆるビジネス・オポチュニティ≠フ提供事業者に対する規制を強化するため、「NPRM」と呼ぶ規則制定提案告示を発表した。「NPRM」に基づくパブリックコメントの対象は2種類のルールだ。
 1つは、誤解を招いたり、明確な根拠のない儲け話≠規制するビジネス・オポチュニティ・ルール(以下BOR)。BORを改定し、規制対象をビジネス・コーチングや投資話といったマネー・メイキング・オポチュニティに拡大する。BORに違反すればFTC法に抵触することとなり、提訴や処罰が可能となる。
 もう1つは「EarningsClaimRuleRegardingMulti―LevelMarketing」(以下ECR)と呼称するルール。名称の通り、MLMの報酬説明に特化した全くの新しいルールで、BOR改定案とともに60日間の意見募集が始まった。
 BORは3年前の22年11月にも、同様の趣旨の改定案のパブコメが行われたことがある。その後、具体的な動きはなかったが、改定内容を一部修正し、改めて「NPRM」にかけられた。
 修正した最大のポイントは、BORの規制を広げる対象からMLMを外したこと。この修正と入れ替わる形で、新ルールとなるECRが突如、登場した。

FTC法18条活用

 ECRの目的は、MLMマーケットで散見される誇大な報酬説明の排除だ。このため、MLM企業(会員含む)に以下の4カ条の「不実告知」を禁じる。
・誤解を招く報酬説明
・証拠もしくは合理的根拠に基づかない報酬説明
・MLMへの参加を雇用の機会と偽って説明すること
・消費者が報酬に関する正確な情報を得ることを妨げるため、虚偽もしくは裏付けのない説明を行うこと
 さらに義務事項として、報酬説明に関する証拠の提供を求められた場合、誰に対しても6カ月以内に文書で提供することを定める。証拠の記録を3年もしくは5年間保管する義務も含まれる。
 FTCは、不公正・欺瞞的な行為・慣行を包括的に禁止するFTC法第5条に基づき、数多くのMLMを提訴し、時に巨額の和解金を支払わせてきた。したがって、MLMの誇大な報酬説明は現時点でも違法だ。
 一方で、FTC法の第18条は行為・慣行の特定、明確化を目的としたルールを定める権限をFTCに与えている。
 その際はパブコメを行った上で、規制対象の分野で問題が横行していると証明する必要がある。ECRの「NPRM」は第18条に基づく手続きとなる。

従来は指針どまり

 ECRが成立すれば、MLMをターゲットとした法的強制力をもつ初のルールになるとみられる。
 FTCはこれまでもMLM業界に対して報酬説明のあり方を示してきた。一例が18年に公表した、MLMが遵守すべき「18カ条のビジネスガイダンス」。しかし、あくまで指針にとどまっていた。
 

(続きは2025年1月23日号参照)