岐路に立つ化粧品訪販 老舗・大手の業績分析F アイビー化粧品@
多様化せず対面販売にこだわり
コロナ禍直撃で苦境
同社は、他社の多くが時代の流れに合わせて販売チャネルの多様化に舵を切り、公式オンラインショップやアンテナショップを展開する中、直接対面によるカウンセリングと販売にこだわってきた。ただし、リアルでの顧客接点という意味では、従来型訪販からのシフトを実践している。2003年から、地域密着型のサロン「アルテミス」を各地に展開し、「事業の見える化」を進めて顧客接点の強化を図った。サロンでは、カウンセリング、フェイシャルトリートメント、ボディトリートメントの各サービスを行うほか、スキンケア、メークアップ製品を自由に試すことができる。希望者にはスタッフがアドバイスを行い、クロージングにつなげる。現在、「アルテミス」は販社ベースの運営で全国に約120店舗を展開しており、東京、大阪、京都、兵庫、岡山、福岡といったエリアに多くみられる。一方、北海道・東北エリア、甲信越・北陸エリア、四国エリアなどはサロン展開がほとんどみられない。これは、アイビーの販売組織が全国まんべんなくというより、特定のエリアに偏っているという点に加え、販社ベースの展開がメーンであるため、各販社の営業方針による部分が少なくない。
「アルテミス」は、「顧客満足度向上」の拠点という位置づけでスタートし、@顧客の定着化補完、A顧客接点の補完、Bブランドイメージ補完、C販売員教育の補完の場――という4つの役割をもつ。しかしながら、2010年代には勢いを維持していたサロンサロンも陳腐化しつつあり、特にコロナ禍以降は苦境が続いている。老舗企業ゆえ販売員の高齢化が進んでいることも事業改革を進めにくい点も指摘できる。
図表は、2001年3月期から2024年3月期までの約四半世紀にわたるアイビー化粧品の業績の推移だ。売上面のピークは、2017年3月期の66億6400万円で、前期比29.1%増。営業利益は同72.9%増の10億9000万円と、売上・利益ともに過去最高を達成したのがこの時期だ。業績を押し上げたのは、2016年9月に発売した美容液「レッドパワーセラム」(30ミリリットル・税込2万2000円)で、創立40周年の節目に投入したアイテムで、初年度は61万本超を出荷して売上に貢献した。現在も、シリーズ品で美白を訴求した美容液「ホワイトパワーセラム」(30ミリリットル・同1万1000円)と並んで、売上基盤の核となっている。このヒットアイテム≠フ存在の有無が、売上を大きく左右していると言っても過言ではない。
同社の収益は、第2四半期と第4四半期に実施する販促キャンペーンで大半を確保するという仕組みを長年にわたって続けている。第2四半期では、ロングセラーアイテムである「リンクルローション」を、第4四半期では美白アイテムをプロモーションすると同時に前出の2品のセラムを強化製品と位置づけてきた。2019年3月期の売上は前期比40.6%減の33億3500万円と急減しているが、セラム2品の受注が年間を通じて低迷したことが大きい。収益構造の特性から、キャンペーンが成功すれば売上が伸び、販社の在庫調整等で不振となれば売上が落ち込むという動きになる。
こうした特性が顕になったのがコロナ禍だ。サロン等のリアル接点による営業活動が大幅に制限され、2023年3月期以降の売上はピーク時の半分以下にまで落ち込んでいる。 (つづく)