ポーラ プレミアム パス

利便性の向上≠フ危うさ

ID管理を強化、サービス均一 元販売員「つながり希薄の懸念」



▲顧客の実店舗への誘導と定着を目的とした「ポーラ プレミアム パス」の新システム


▲顧客個人の情報を全店舗で共有する
「カルテna」
 ダイレクトセリング化粧品分野では、コロナ禍にリアルでの顧客接点が減少するとともに、価値観やライフスタイルの変化を受けて、既存のビジネスモデルではニーズをキャッチしづらい状況が続いている。最大手のポーラ(本社・東京都品川区、及川美紀社長)では、「ポーラ ザ ビューティー」をはじめとしたサロンビジネスの苦戦が目立つ。背景には、ベテラン販売員の高齢化に伴う営業力の低下だけでなく、サロンに求められるサービスや商品への対応が遅れていることが指摘できる。同社では、2023年から大々的な改革に着手し、チャネル横断のビジネスモデル構築を急いでいるが、その成果はまだあらわれていない。その原因はどこにあるのか。

 

23年導入のPPP強化


   ポーラが2023年4月に導入したメンバーシッププログラム「ポーラ プレミアム パス」(PPP)は、店舗やECなど、国内すべての販売チャネルごとに保有していた顧客IDを共通化し、一括管理できるシステムだ。ユーザー側は、購入履歴や肌分析結果など、販売チャネルを問わず共有することで、自分のライフスタイルや好みに応じてサービスを受けられるというメリットがある。一方、メーカー側としては、多様化した複数の販売チャネルの顧客を共通のIDで管理することで、商品やサービスを提供する機会を増やし、潜在需要の取りこぼしを防ぐ狙いがある。特に、昨今、ポーラブランドへの入口として占有率を高めているECチャネルでは、以前に比べてシェアは下がったとは言え6割近くの売上(ポーラブランド)をもつ委託販売チャネルとは異なる顧客層の開拓にもつながっており、ポーラとしては、これらの新規顧客を「ポーラ ザ ビューティー」などのリアル接点に誘導してロイヤルユーザーとして定着させたいところだ。多様な販売チャネルをもち、それらを顧客が回遊≠キることで、飽きのこないブランドをめざすというのが基本骨子と言える。
 11月11日、先に挙げた「ポーラ プレミアム パス」のサービスを拡充し、オンラインストアで購入した製品をポーラの店舗(百貨店コーナーを除く一部対象店舗)で受け取ることができるサービスを導入した。外出先や仕事帰りなど、自分が好きなタイミングで最短翌日から受け取ることができるという。オンラインショップからの配送は宅配便などで送られるが、昨今のドライバー不足や受け取る側の不在問題等、社会情勢を鑑みた内容にもなっている。また、受け取った店舗では、購入した製品のさらに詳しい説明や、使用方法などの美容アドバイス、肌分析体験の申し込みなども可能で、前述した「EC経由での顧客の定着化」という狙いも多分に含まれているとみられる。
 また、「ポーラ プレミアム パス」の新たなサービスとして、店頭接客サポートシステム「カルテna」もスタートさせた。同システムは、予約情報をはじめ、使用アイテムの状況、過去の肌分析データ等のほか、利用した店舗での体験履歴など、顧客IDにもとづく情報を集約したもの。これにより、普段と異なるポーラの店舗を訪れ、サービスを受ける際にも共通の顧客データにもとづいて個々人に適切なサービスやカウンセリングを提供することが可能になるという。

顧客・スタッフが選ぶ<Vステム


 ダイレクトセリングというビジネスモデルは、その黎明期から販売員と顧客の密接な関係性によって成り立ってきた。人と人のつながり≠最大の強みとしてきたが、裏を返せば、その関係性がさまざまな理由で希薄になったり、あるいは破綻してしまった場合、顧客を取りこぼしてしまうケースも少なくない。


(続きは2024年11月28日号参照)