岐路に立つ化粧品訪販 老舗・大手の業績分析 シーボンB
サロン2極化、役割明確化 若年層取組みに課題
▲都市部のサロンはハイグレード感を演出してロイヤルユーザーを囲い込む
前々回の本欄において、コロナ禍後のシーボンの業績は著しく低下していることを指摘した。ピーク時の2014年3月期(売上高150億1700万円)に対して、直近の2024年3月期(84億9800万円)は4割以上も売上を落としており、過去20年で最も厳しい状況といっても過言ではない。売上高原価率をみても、2014年3月期が18・3%、2024年3月期が24・6%と6・3ポイントもの開きがある。昨今の物価上昇が少なくない影響をもたらしているとはいえ、損益面を圧迫していることは確かだ。打開策としては、現在進めている事業の多角化は、売上をカバーするには規模が小さく、また事業そのものがテストマーケティング的な要素が含まれているため、大きな収益を見込むことは難しい。そのため、主力のサロン事業の改革が不可欠となる。
シーボンは、全国に100店舗近くを展開している「フェイシャリストサロン」について、都市型・郊外型で役割を明確化する方針を打ち出しており、都市部にあるサロンはロイヤルユーザーを想定し、高付加価値のハイクラスサロンへのリニューアルを実施している。前期末までに9店舗を改装済みで、2025年3月期末までに12店舗、2026年3月期までに約10店舗の改装を行う計画で、全体のおよそ3割の店舗においてリブランディングを行い、60周年に合わせて主力サロンのリニューアルを完了させる予定だ。一方、郊外型のサロンについては、従来の「フェイシャリストサロン」の路線を踏襲し、来店しやすいサロン≠ニしてのイメージを打ち出していく。
ハイクラスサロンは、優良顧客であるロイヤル会員にフォーカスした内容で、ロイヤル会員専用のロイヤルルームを設置するなど特別感≠演出。また、ロイヤルカスタマー専用デスク、限定施術メニューや感謝デーの実施、さらにはロイヤル会員限定の工場見学会を実施するなど、シーボンブランドへのローヤリティが高い会員へのフォローを充実させて囲い込む方策だ。同社の会員数は約6万2000人(2024年3月期時点)で、うちロイヤル会員は約20%としており、先に挙げたサロンやサービスの強化、さらに高価格帯アイテムの開発によって、この比率を約25%に引き上げ、事業基盤の安定化を図っていくという。
60周年というタイミングに合わせて、ロイヤル会員重視に舵を切り、ブランドの高付加価値化で事業の継続を図ることを鮮明にしたシーボン。中期計画では、2026年3月期までに売上高100億円台への回復をめざしているが、正直なところ、足元の業績は決して芳しくはない。高収益の源となるロイヤル会員が増加する一方で、それ以外の会員層が離脱する動きもみられる。もともと同社の会員は年齢層が高めだが、その影響が今後さらに生じる可能性もある。2010年代においては、ポーラがハイブランド化に成功したが、現在とはまるで状況が異なる。また、ポーラ自身も現在はサロンビジネスの岐路にある。シーボンの戦略が今後、どのような変化をもたらすのか、注視が必要だ。
(続きは2024年11月21日号参照)