ダイレクトセリング化粧品

「シワ改善」は打開策になるか ヒット不在の中、投入相次ぐ

求められる理念の体現



▲「シワ改善」をうたった新製品「リンクルショット メディカルセラム デュオ」(ポーラ)
 ダイレクトセリング化粧品市場では、コロナ禍で受けた打撃から脱却すべく、 各社がさまざまな施策に取り組んでいる。新規顧客へのアプローチには、オンライン・オフラインの双方を用いたツールが普遍化しつつあるが、一方では、コロナ禍前も含めて、これまでショップ展開をしていなかった企業が期間限定とはいえリアル店舗を開設するなど、消費者の購買行動に合わせて訴求方法も見直されている。商品政策ではエビデンスにもとづく製品開発が重視され、美白やエイジングケアが依然としてニーズが高い。特に、「シワ改善」をうたったアイテムが各社から展開されている。ヒット商品を生み出すのが難しい環境下、「シワ改善」 の投入がどう影響するのか。

 

おうち美容≠ナニーズが増加


   トレンドに沿った『シワ改善』アイテムを投入するのは、商品政策としては正攻法だろう。ただ、ダイレクトセリングというビジネスモデルを踏まえると、そうとは言い切れない部分もあるのではないか――」。こう述べるのは、自身も老舗のダイレクトセリング化粧品企業に勤務した経験をもち、現在は美容関連のアドバイザーとして活動するA氏。A氏が務めていた企業では、サロン(店舗)をもちつつ、クチコミをベースに愛用者とビジネス会員を獲得してきた。自社で公式オンラインショップを開設し、ダイレクトセリングルートと同じ商品を販売していたが、売上の大半はダイレクトセリングルートによるものだったという。「シワ改善」をうたった商品こそ取り扱っていなかったが、「美白」「エイジングケア」といった定番アイテムはラインナップしており、「会員からも人気があり、絶対に外せないジャンル」(A氏)だった。
 図表に示したのは、主要ダイレクトセリング化粧品企業で、「シワ改善」をうたったアイテムの一覧だ。最大手のポーラを筆頭に、大手・老舗企業の多くが「シワ改善」アイテムをラインナップに入れている。現在、「シワ改善」をうたった有効成分は市場に複数展開されているが、最も多いのは「ナイアシンアミド」で、化粧水や乳液、クリーム等、多様なアイテムに配合されており、ダイレクトセリング業界でも同成分を配合したアイテムが多数扱われている。図表に示したダイレクトセリング各社で独自の「シワ改善」成分を取り扱っているのは、ポーラ(成分名・ニールワン)と、日本メナード化粧品(成分名・VEP―M)の2社。メナードの美容液「薬用ラインズリセット」は、発売日が2023年9月21日で、「シワ改善」カテゴリーの中では比較的後発だ。コロナ禍で消費が落ち込んだ中、美容分野では自宅でケアするおうち美容≠ェにわかに活況を呈した。現在もそのトレンドが続いており、「価値観やライフスタイルが多様化している現在、ヒット商品を生み出すことはなかなか難しい。一定のニーズを予測しやすい『シワ改善』アイテムが増えるのは、ある意味で必然」(A氏)。

「機能性偏重」リスクを内包


 今や、「シワ改善」は欠かすことのできないアイテムのように思える。A氏は、「女性だけでなく男性にも認知が広がっている『シワ改善』は、たしかに訴求力があり、販売現場でも説明が分かりやすく勧めやすいメリットがある。実際、新規ユーザーにアプローチするには便利≠ネアイテム」と有用性を認める。


(続きは2024年11月14日号参照)