トップインタビュー 日本ネットワークシステムズ 代表取締役社長 山 隆憲 氏
代表取締役社長 山 隆憲 氏
多発する自然災害への備え
「2025年の壁」への対応不可欠
コロナ禍の中で機運が高まったDX推進を背景に、ダイレクトセリング業界ではIT技術を駆使したビジネスモデルが定着しつつある。自然災害が多発している昨今では、あわせてBCP(事業継続計画)の策定も急務だ。その一方で、システムの老朽化に悩む老舗や、さまざまなハードルでシステムのアップデートが追いつかない企業も少なくない。2024年6月に創業45周年を迎え、600社以上のMLM企業にシステム支援等を行ってきた日本ネットワークシステムズ(本社・宮崎県宮崎市)の山隆憲社長に、DX推進とBCPについて聞いた。
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――2024年はコロナ禍が収束しましたが、地震や豪雨などの自然災害が各地で発生しており、BCP(事業継続計画)の重要性がますます高まっています。同時に、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による事業改革も待ったなしの状況です。
BCPの観点から、DXの有用性を捉えることもできます。新型コロナウイルス感染症の拡大は、インターネットとデジタル技術を活用することが事業継続のカギとなり、テレワークは緊急時に事業や業務を継続する手段としても有効です。コロナ禍によりテレワークが普及しましたが、弊社は2001年のASPサービスを導入時より、主宰企業様がどこからでも安全・快適にデータにアクセスできるシステムを構築しています。システム、およびデータは当社内のサーバー上にあるため、普段から主宰企業様は弊社にアクセスしてリモートで作業して頂いていることになります」
――BCPとDXの関係性は…。
BCPは、事業の継続性に重点を置いていますが、DXは、ビジネスのデジタル化を実現し、業務効率の改善、コスト削減、市場投入までの時間の短縮を可能にするものです。BCPは、企業が変化する市場環境に適応し、事業を継続するための準備を整えるのに役立つ重要な戦略です。BCPとDXを統合することで、企業は変化する状況に迅速に対応し、事業の継続を確保し、競争上の優位性を生み出すことができます。BCPとDXは、企業が緊急事態に対応し、業務を継続するために重要な役割を果たします。
――具体的には…。
まず、『迅速な情報収集と共有』です。DXを活用してクラウドベースのシステムを導入することで、緊急時に従業員の安否確認や被害状況の情報共有が迅速かつ正確に行えます。次に、『リモートワークの推進』。自然災害やパンデミック時にオフィスに出社できない場合でも、Web会議システムやクラウドサービスを利用することで、業務を継続できます。さらに、『業務の自動化』が挙げられます。DXにより、緊急連絡や安否確認を自動化することで、人的コストを削減し、迅速な対応が可能になります」
BCPとDXの連携により、企業は緊急事態においても業務を継続しやすくなり、被害を最小限に抑えることができます。これらの取り組みは、企業のリスクマネジメントにおいて非常に重要です。DXとは、データとデジタル技術によって商品やビジネス、業務、企業文化等の変革を成し遂げるものであり、その目的は競争力の維持・獲得・強化を果たすことにあります。しかし、IT人材が不足している昨今、最新の技術に対応することが難しいレガシーシステムの保守・運用に多くの人的リソースが割かれていることが指摘されています。最初にまとまった投資が必要である点は、DX化を進める際に、企業が抱える課題のひとつです」
――必要性を認識しつつも、実行できない企業も少なくない…。
『2025年の崖』は、経済産業省が2018年9月に発表した『DXレポート』に記載されたDXが、今後日本で推進されなかった場合に発生する企業の急速な競争力の低下を意味する言葉です。現在は企業の約8割がレガシーシステムを使用していると言われており、レガシーシステムの存在が、DXの足かせになっています。長年MLM事業を行っている老舗企業では、新たにサービスを導入しようとしても、以前に導入したシステムがどのようになっているかを管理者が確認できない、またシステム担当者が退職した場合も後任者の不足で困っているケースが多々あります。また、法令改正に伴うシステム変更が必要な場合、すぐに対応できない場合もあり、コロナ禍ではDX推進を強化する動きがみられました」
(続きは2024年10月24日号参照)