消費者庁の「書面電子化」実態調査 

「実施可能性が高い制度」、検討に言及「証する書面」の電磁的提供、対象拡大提案


 昨年6月に始まった特定商取引法の「書面電子化」制度。しかし、今のダイレクトセリング業界で、法定書面を電磁的方法で提供(交付)している事業者は皆無と言っていい。この実状が消費者庁による実態調査で改めて浮き彫りとなった(9月5日号1面参照)。調査報告書はアンケートで得たデータをもとに、事業者が電子化に踏み切れていない様々な理由を整理。さらに注目すべき点として、消費者にとっての利便性が見込まれ、事業者が着手しやすい制度を検討することにも踏み込んでいる。

手続き「非常に煩雑」


 事業者による書面電子化を阻んでいる大きな要因は、何重ものステップに分かれた確認義務、説明義務が設けられたことにある。代表的事項は、
・消費者が電磁的方法による提供を希望するかどうかの確認
・電子データの到達日がクーリング・オフの起算日となることの説明
・消費者自身で電子機器を操作できることを実際に操作してもらい確認する
・電磁的方法による提供に承諾したことを「証する書面」の交付
・第三者に同時送信するかどうかの確認と、希望された場合の同時送信
・電子データの内容を明瞭に読むことができるように表示する
・閲覧可能な電子データが到達したことの確認
――など。一部の手順を怠った場合は行政処分のリスクにさらされる。
 調査報告書は、この中でも特に、電磁的方法による提供へのデジタル適合性を消費者が有するかどうか確認する手続きと、承諾の取得を「証する書面」を紙媒体で交付する義務のハードルが高く、一連の手続きを「非常に煩雑」と事業者が受け止めていると記載している。
 当初期待された業務負担の削減や消費者にとっての利便性向上が見込めないだけでなく、制度の複雑さゆえに消費者の誤解を招いて「意図しないコンプライアンス違反のリスクが増大」する懸念もあるため、実施に踏み切れていない実情をまとめている。

入力の手間「極力低減」


 一方、調査報告書は、電子化がほとんど進んでいない実態をまとめただけでなく、このような状況の“改善”に結び付くアイデアの提言も行っている。
 「課題及び今後の論点」とした章で、「現行の契約書面等の電子化の手続は、事業者にとって容易に実施できる制度にはなっていない可能性がある」と指摘。その上で、「消費者保護の視点を前提としつつも、より消費者の利便性や事業者における実施可能性が高い制度の在り方を検討することも考えられる」と言及している。

(続きは2024年9月19日号参照)