シリーズ・特商法の「書面電子化」規制 完全電子化≠ナも手続き「煩雑」

オンライン特役の「模擬サイト」作成、1117人の理解度調査
低いユーザビリティ「消費者保護の観点からも問題」


 消費者庁の実態調査で、特定商取引法の「書面電子化」制度を利用している事業者はほとんどいないとされたことが分かった(9月5日号1面・12日号4面・19日号4面参照)。 複雑かつ煩雑な手続きや、コンプライアンスリスク等のデメリットが嫌気されたもの。一方、これに並行して行われた、電磁的交付の手続きに関する消費者を対象とした理解度調査においても、 過半数が不便さを感じ、煩雑で分かりにくいとする回答が多数派を占めたことが分かった。調査は、オンライン完結型の特定継続的役務提供の「模擬サイト」を使用。 電子化が可能となった6類型の中で唯一、完全電子化≠ェ許された業態においても、ユーザビリティの低さが理解を妨げていた。調査報告書は消費者保護の観点からも問題があると指摘している。

 

サイトで疑似的購買


   委託事業で行われた理解度調査は、昨年10月にNTTデータ経営研究所が落札。同研究所は事業者が対象の調査も落札しており、計1800万円を要した調査結果が今年3月に報告された。
 調査事業を担当した消費者庁の取引対策課は、報告書の公開を「内部の検討用」と拒否。本紙が行政文書開示請求を行った結果、一部の記載が「黒塗り」されて開示された。
 周知のとおり、「書面電子化」制度は何段階にも渡る複雑な手続きを経なければならず、事業者に二の足を踏ませている。
 しかし、複雑で煩雑な仕組みは、電磁的交付を希望する消費者にとってのハードルも高めた。電子化を可能とした特商法改正で、その目的に同庁は「消費者利益の擁護増進」を掲げた。 これがどこまで実現可能かチェックの必要がある。
 このような背景の下で行われた調査は、消費者が電磁的交付を希望する段階に始まり、電子ファイルを受領するまでの一連の手続きを体験できる「模擬サイト(試験サイト)」を作成。 今年2月〜3月、ネットで日常的に商品・サービスを購入する1117人にサイト上で疑似的購買を行ってもらい、事後アンケートを実施した。

ク・オフ、理解度88%


 ただし、電磁的交付の際は、承諾の取得を確認する「証する書面」を紙媒体で渡す必要がある。1117人全員に「証する書面」を郵送することは現実的でない。
 このため、今回の調査は「証する書面」を電磁的方法で渡すことが唯一許されるオンライン完結型の特定継続的役務提供(以下特役)に絞って実施。指摘役務7種類から、 オンライン方式の英会話学習と結婚相手紹介の2種類が選ばれた。
 オンライン英会話学習は、電子化“解禁”の方向性が定まった?年の規制改革推進会議で、ヒアリングした事業者の役務。同じ役務が今回の調査の対象に含まれた。
 では、どのような調査結果が得られたのか。まず関心を引くのが、契約内容やクーリング・オフの理解度が比較的高かった点だ。あくまでオンライン完結の特役2種に限定されたデータだが、注目されると言える。
 調査では、「模擬サイト」で疑似契約を体験してもらったサービスの内容を質問。正答率はサービスの提供期間が77.0%、契約金額が84.5%、ク・オフ期限が88.8%で、 「8割から9割程度の者が正確に内容を理解していた」(報告書より)とされた。
 一方、契約金額に含まれる内容と支払時期の正答率は50%台、中途解約の方法は20%台に落ち、理解度は「対象によって濃淡があ(る)」ともされた。

紙媒体と「大きな差ない」


 調査では、紙媒体の契約書面と比べた理解度の差も分析している。過

(続きは2024年9月19日号参照)